出版社の方、この人をスカウトしてください
- ★★★ Excellent!!!
酷い話です。
いえ、貶しているのではありません。この作者は、物凄く文章がうまいです。心理描写や話の進みかたに思わず膝を打つほどにうまいです。しかし、酷い話なのです。
例えていうなら、100メートル走を10秒台で走れる筋肉隆々のアスリートが、陸上の大会本番でトラックをでんぐり返ししながら後ろ向きに白目をむきながら走ったみたいな。
それでも凡人以上は充分な記録を出しているのだけど、それでもなぜそんな走り方をするんだ、みたいな。そんな感じです。
ただ、引き込まれる文章であることは間違いありません。
私が個人的に凄いなあと思ったのは、折り鶴を完璧に折れるように厳しく訓練された少女が、わざと下手に見せるために苦労するときの心理描写です。単に初心者の真似をするだけでは駄目だという、よくわからないけど、でもわかる、その過程の表現に感心してしまいました。
あとは、2話ぐらいに出てきた男の話で、いわくつきの村に来て猛っていた心が、その場にいた小さな兄弟の姿を見て寂しい気持ちになるというところ。これと同じような感覚、私もしたことがありまして。
私事なんですが、仕事で大阪全域を3年間訪問していました。そのとき、やはり飛田新地やあいりん地区を歩くときは、変な高揚感とか、自分の中の偏見とかあったんですね。
でも、そう、幼い子供が普通にそこに生活していて。「おまん」のお姉さんも。みんな普通に生活してる。でも普通じゃないところもある。そんな光景を見たときのことを、思い出したのでした。
これまた余談ですが、ネットで語られる西成区は、実態とかけ離れてると思うところがあったんですが、まあ合ってるとこもあるし……と、モヤモヤしている私なんですが、この男が感じた寂しさというか、高ぶりを萎えさせる何かしらの情報は、その目で見ないとわからないのかなと思った次第です。
後半関係ない話で、大変失礼しました。
酷い話だったので、他の題材もぜひ読みたいです!本当に書いてください、お金を出しても構わないと思っています。