31~40
#31
「最近さ、夜になると……出るんだよ。気配っていうのかな。なんかこう、迫ってくるような感覚があって、どうしても目が覚めちまう。布団から出て廊下を歩いて……年取るとどうにも近くていけねえや。しょんべん」
#32
「見えない鎖に縛られた我が身。時間も、空間も、未来さえも拘束され、ただただ捧げる日々を刻まん。手に入れたるは、数枚の紙切れで約束された幾ばくかのかりそめの安寧の地……」【訳:住所ローンを組みました。】
#33
「おきゃくさんどちらまで?」「愛する家族のいる我が家まで」「かしこましたー」「トイザらス寄ってもらえるかな? 明日が息子の誕生日なんだ」「そのこはきっとようかいおっちのゲームがほしいとおもいますよー」
#34
「ほんまねローション考えた人は天才や思いますね。若い娘で肌で体温でぬるぬるでしょ。そんなんもー気持ちええに決まってますやん。そら抗えまへんて。嵌まりますて。惚れますて。恋のマジックローションですわ」
#35
こうやって年を取ったところで、なかなか慣れるものでもないし、会ったところでこんなに苦しくて面倒くさくて折り合いをつけるのが大変なのに、それでも恋は素晴らしいのか。素晴らしい。素晴らしいよ。くそったれ。
#36
須磨海岸で海を眺めていた。ここはこんなにいい風が吹いているのに、俺にはここのところ全然いい風が吹いてこないなどと考えていると、学生のバイトの娘がうちわをくれた。何とかもう少しやっていけそうな気がした。
#37
僕の夢はプロ野球選手になることです。満員のスタジアムでカクテル光線を浴びながら颯爽と登場し、相手チームの守護神から逆転タイムリーヒットを打って、見に来てくれたお客さんを喜ばせたいです。【36歳 無職】
#38
僕には欠落があるとずっと思ってきた。それが、埋まった。やっと気付くことができた。『この欠落は一生埋まらない』という欠片がすっぽりと収まった。清々しくいい気分だった。鏡には久しぶりに見る僕の顔があった。
#39
「驚いたよ。辞めるんだってな……人生わかんねえもんだな。でも、ほら、胃は全摘しても毎日楽しく暮らしてる人いっぱいいるし、他の部位に比べたら、まださ……えっ? イガン退職ってそういう意味じゃ……あ……」
#40
「
超掌編『100文字小説集』 齊藤 紅人 @redholic
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