二章 叫び
櫂斗の妹の新井美咲は今年から日比野高校の一年生で弓道部に所属していた。その弓道部では県大会では一年生ながら3位入賞とそれなりの成績を残していた。そして櫂斗とはあまり仲がよくなく、最近は1日ずっと顔もあわせないという日も続いていた。そんなある日夜遅くになっても櫂斗が帰ってこないと祖母が困惑していた。櫂斗は学校帰りにどこか寄ってきて帰っても必ず8時には家に帰ってた。だか今の時刻は…
「じ、11時…」
美咲は驚きと戸惑いを交えた声をふりしぼって出した。
「お兄ちゃん、どこにいるの…」
さすがの美咲も黙ってはいられなかった。それから祖母ともうちょっと待ってみようということで12時までは待ってみた。だか玄関は全く開く様子はない。これは一大事だとして、祖母は警察に電話をしようとした。そのとき……
「ただいま…」
低い声音で櫂斗が帰ってきた。それを見た瞬間美咲は安堵し、泣きながら櫂斗に抱きついた。
「なんでないてるんだよーーそれとさ…」
「何?」
「抱きつくのやめて………苦しい…」
心配してたのにその自分を貶すような言い方に美咲は少し機嫌をそこねて…
「何よ!せっかく心配してたのにその態度は!!」
「……………ごめん」
それから場所をリビングに移し、美咲は櫂斗になぜこんな遅くに帰ってきたかを訪ねていた。
「お兄ちゃん、なんでこんなに遅くなったの?」
「それは………言えない」
「はぁ?!何いってるの。こんなに心配したんだから理由ぐらい言いなさいよ!」
「ごめん……………でも言えない」
それ以降も理由を聞いたが一向に話す様子は見られなかったので美咲は呆れて自分の部屋にもどっていった。そして櫂斗も風呂にも入らずに自分の部屋にあるベッドに飛び込んだ。そして枕に顔をうずくめながら先ほどの出来事を思い返した。
ーーーーーーーー
「ここはどこだ」
櫂斗は男に連れてこられて雑居ビルの中にある研究所のような所に連れてこられた。その中には見たこともない機械や手術台のようなものもあった。そして櫂斗は主旨を思いだし、男に尋ねた。
「さ、早く俺を強くしろ。そして母さんに会わせろ。」
「待て待て、そう急ぐな。まず私はどのように君を強くするか話そう。」
そうして男はその大きな機械の前で振り返りその全貌を話した。
「櫂斗君。君は反作用的核操作装置というものをしっているか?」
「いや、聞いたことがないね。だが一体なんなんだそれは。反作用とか核とか。」
「そうかな?」
「どういうことだ…?」
そして男はまた笑みをうかべ…
「では『ATOM』とは何かしってるかね?」
「っ…!」
それには聞き覚えがあった。たしか…
「『atomic technology operation machine』だ。君にはこれを使ってもらう。」
「ふざけるな! たしかそれは危険だからといって実験を中止されたはずだ。それなのになぜお前は実験を続行してる!」
そう叫んだ。その声は部屋を反響させて響いた。鼓膜にもその振動が届き、少し耳鳴りがした。
「大丈夫だ。私を信じろ」
「信じれるか!大体そのATOMってやつは危険何だろ?そんなやつを俺にはめて何をするつもりだ?」
「いいからだま…」
「第一お前の目的を教えろ。そうでなければ協力できない」
俺は叫び続けた。自分の思ってること。すべて言えばそれが正しいと思った。だが…
「黙れよクソガキ…」
そう言い男は俺を目を点にして睨む。その気迫に押され少し後ずさる。
「お前は俺の言うことを聞いていればいいんだよ」
先ほどまでの男と違い、ものすごい低い声音で話す。そして俺に近づいてくる。
「く、来るな!」
だが男は止まらない。俺を見据えたまま接近してくる。
「ここにいい披検体がいるんだ。簡単にあきらめるか…」
そうして頭を掴まれたあとものすごい力で握られ…………
記憶がそこで途切れた。
そして目覚めたら俺は学校の前に捨てられていた。
ーーーーーーーー
そしていまに至る。
目覚まし時計がなり、それを止めてから俺はゆっくり起き上がる。枕を見ると顔の型がとれていた。
「俺は…あれから寝たのか」
時計の時刻を見ると8時を過ぎていた。
「やっべ、遅れる」
リビングのある一階に行くと妹がもう行く準備ができて玄関の前に立っていた。
「お兄ちゃん起きるの遅いよ。早くしたほうがいいよ。今日朝から朝会あったでしょ?」
「あ、そうだった」
昨晩のことで頭がいっぱいだった櫂斗は今日早くから朝会があることをすっかり忘れていた。そして朝ごはんを急いで食べて櫂斗も準備をした。美咲は先に行ってもらい俺はあとから行くつもりであった。支度ができて外に出た時、空は今にも雨が降りそうな曇りだった。
「嫌なことでも起きそうな天気だな~」
そうつぶやいて櫂斗も家を出発した。この地区の町並みは今日も変わらない。通勤通学の人や、散歩中のお年寄りがいるだけの町である。そんなつまらない世界に生きる意味などあるのか。櫂斗はそう思う。実際自分一人死ぬくらいで世界に変化はあるのか。自分は地球の中のアジアの中の日本の中の東京にある地域に住んでる地球70億人分の1人なんだ。そんな俺に…
車の通る通りに出た時、
「きゃ~~~!! ひったくりよ~!誰か捕まえてーー!!!」
そんな叫び声が聞こえて思考を中断してその叫び声のもとを探した。そしたら駅に続く道で女性が自転車から落ちて倒れていた。そしてそのひったくった人物は全身黒の服で頭にも黒のヘルメットを着けてバイクでこちらの方角に向かってきた。そして俺の前を通過して、そのまままっすぐの道を走って逃走していった。被害者の女性はいまだに助けを求めて叫んでる。一瞬捕まえようとしたが無理があった。あっちはバイク、自分は歩き。流石に差がありすぎたので追うのを諦めた。そして向きを変えて学校に行こうとしたとき……
「助けないの?」
ふと誰かの声が聞こえた。それは俺の頭に直接話しかけてるようで…
「ほら、行動をとれよ。だから僕の力を授けたんだ。」
「誰だ!」
「残念ながら探してもむだだよ。僕はその世界にはいない。そして今、僕は君を操ってる。」
「誰だか知らんが俺は学校に行かせてもらう!」
「君は僕の意のままさ。…………………………『動け、少年よ』」
その声の主がそう呟いた瞬間…
俺の体から目映い閃光と共に煙が発生し、皮膚が全て硬質化して、さらに足の形が角ばって変形していった。しばらくして煙などが収まり、周囲が静まり返った。そしてその声の言うとうりに歩き出して、周りの人々のどよめきを気にせず新井櫂斗はひったくりが起きた道路の真ん中に立ち、バイクが逃げた方向を睨む。
「目標までの距離2100メートル。そして目標はバイクで逃走。難易度【易】」
無意識にそうつぶやき…
「楽勝だ、」
そう言い残して櫂斗は光の早さ如く走りだし、犯人の肉薄まで迫った。後ろでは櫂斗が高速で移動したことによって発生した風で爆風が吹き荒れていた。
「うおっ! なんだお前。どうやっ…」
「黙れよ…死ぬべき害虫が」
櫂斗はそう言い、引ったくられたバックを取り返したあと。男の乗っているバイクを横蹴り して、バイクと共にブロック塀に打ちつけた。
「がはぁっ……くそ、なんなんだよお前は!」
男は口から血を出しながら言った。そして俺は男に近づき、
「お前にもう用はない……………死ね」
そういあながら手を男の脳天に当てた。手に穴を開けその穴からバーナーを出して焼き殺そうとしたとき、
「なにやってるの?!」
その声の聞こえる方を向くと、バックを地面に落とし、手を口に当てて震えまくってこちらを向いてるクラスメイトの凜がそこに立っていた。その凜を見た瞬間…
「まずいな…知り合いが来ちまった。今は元に戻ろう。」先ほどの声の主がそう言った矢先、俺は自分の意識を取り戻した。
「あれ?なにやってんだ…俺は…」
「あなた、いまその男性を殺そうとしたのよ。覚えてないの!?」
「俺が…………殺す? 人を??」
そして周囲が沈黙に包まれた。
しばらくして警察が来て、俺もちろん現場に居た人たちは皆、事情聴取をされた。俺も色々聞かれたが、全く記憶がなかったので答えられなかった。そして犯人を負傷させたとして署まで連行され、目撃者にお前がものすごいスピードですっ飛んで行ったと言われたがそれはどういうことだ等と聞かれた。警察の言葉を横流しに聞きながら俺は考えた。まさか………これは昨日の出来事のせいじゃないか。このままでは死者もでかねない、と。そしてもう一度あの男に会って色々聞いてやる、と思った。
そしてまた人々の知らぬ恐怖は今も膨らんでいく。
炯眼のアトム ハルシオン @yukakun
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