第12話
海の見えるM公園のベンチに座り日本海と飛ぶ鳥をボーッと眺めていたら、波打ち際を歩いている女の子を見つけた。僕の学校の生徒だ。
「危ないよ、そんなに海の近くを歩いていたら」思わず声が出た。
「あなた!」女の子は呼びかけた。「あなた! 何組?」
「だから危ないって!」
僕は波打ち際のほうに駆けていった。カラスが横をかすめた。
「波は突然出てくるんだ、もっと堤防に近づいて」
「手を貸して」女の子は右手をそっと伸ばした。「のぼれないの」
同級生の女の子の手など握ったこともない僕はどぎまぎしたが、その右手を掴んだ。
廃車になった客車の中で、ふたりで座り込んでいた。
「いつもあんな危険なとこを歩いているのかい」
「親とケンカしちゃったの」
「まさか、自殺……」
「そんなわけないじゃない。波が恋しくなっただけよ」
僕には彼女が考えていることがよくわからなかった。彼女は結構みずみずしい顔立ちをしていた。
「あたし、『やまわきみおね』」
「山脇澪音?」
「副部長、知ってるんですか?」
「友達の知りあいの知りあいの知りあい」
「はぁ……」
後日、M公園のベンチに山脇澪音がいた。
「波にたわむれるのはやめたのかい」
また、思わず声をかけた。
「親とケンカした理由、知りたい?」
「うん、知りたい」
「アメリカの大学に留学したいの、あたし」
「へぇぇ!?」
「だから海が好きなの」
「『だから』……?」
僕は新聞部(仮題) ばふちん @bakhtin1988
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。僕は新聞部(仮題)の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
読書という砂浜/ばふちん
★0 エッセイ・ノンフィクション 連載中 3話
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます