第20話 混沌の彼方
すっかり仲良くなったぼくとソニアは、幸せをかみしめてパパリの宿泊所に泊まっていた。
「それで、王子さまに謁見なんて、できるの? チート」
ソニアが聞くが、ぼくにも自信はなく、
「知り合いだし、剣を授かったということは、ぼくは、王子さまの騎士の一人ということになるのではないかな」
「ふうん、チートって、なり行きまかせだからねえ」
そんなこんなで、ぼくは、王宮に行き、王子さまとの謁見を申し出た。自分がチートという者で、王子に聖剣サンジュバを授けられた者であることを告げた。
取り次ぎの係の者は、怪訝な顔をして、
「一応、お伺いだけ立てて見ますが、おそらく、王子が会われる可能性は低いと思われます」
と答えた。
平民のぼくに、王子が会ってくれるとは限らないのだけれど。
ぼくとソニアは待った。
王子の私的な知り合いだといってあるけど、それで王子にぼくが誰か通じるだろうか。
しばらくして、朝から夕方まで待ったぼくらに、取り次ぎの者が声をかけた。
「お会いになるそうです」
と厳粛な雰囲気でいった。
すると、王宮の奥から王子があの日の格好でやってきた。
ぼくはすっかり豪華な服装になっているけど、わかるだろうか。
「チートだな」
王子が押し殺した声でぼくに話しかけた。
「はい、王子さま。以前、聖剣を受けとった者です。その聖剣で、悪魔と竜を退治してきました」
「あははははははっ」
王子が大笑いした。
喜んでいるのか、バカにしているのか。この大笑いは何だ?
ぼくが訝しがっていると、王子がぼくに近づいた。
「悪魔と竜を退治したから、王子であるこのわたしに会いに来たのか」
「そうです」
「くくくくっ」
「何がおかしいのですか、王子さま」
あははははっ、と王子はまた大笑いした。
そして、後頭部の髪をぐっと上にあげた。ポニーテールのような髪型にする。
「バーカ、わたしは女だ。モニカという名の王女だよ」
え?
お姫さま?
ぼくは狐につままれたような顔をした。
「あら、意外と女の子のつてがたくさんあるのね」
ソニアが後ろで愚痴っていた。
異世界でVRMMOチートハーレム 木島別弥(旧:へげぞぞ) @tuorua9876
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