第12話


 翌朝、僕は街を後にした。


「このままじゃ、済まされないわよ」


 というのが、ケイ・フルムーン・エイプリルの捨て台詞。まるで命を狙われるかのような言い方である。やれやれ、と思った。僕がいったい何をしたっていうんだ。ただ、魔女をひとり探しているだけじゃないか。


 ケンオの心は、今も世界のどこかをさまよっている。彼女もまた、夢の真っ最中なのだろう。それを探すのは、昨日見た雲をもう一度見つけるのと同じほど困難で、素敵なことだ。


 もしも――もしも僕に『パシリ』の『ちから』が無かったらどうしただろうか。少しだけ考えて、すぐに止めた。


 関係ない。僕に『ちから』があろうが無かろうが、彼女を探せるのは僕だけだ。僕はきっと彼女を見つけ出せる。そう信じる。ケンオも言っていたではないか。待ってる、と。


「人と恋は出会うもの。時と水は流れるもの」


 僕はもう一度、彼女と出会う。夢を叶える。どんなに時が流れても。


 大きく息をして、空を仰いだ。雲ひとつない空が、そこにはあった。そしてその青空のイメージが、世界一しっくりくる彼女のことを、僕は想う。


――待ってろよ。必ず、必ず探し出してやる……。


 不安や迷いが無いなんて言えば、それは嘘になる。それでも僕は、今にも沈みそうな泥舟のような自信にしがみ付き、旅を続ける。


 あの愛しき、魔女のケンオを探し求めて。

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魔女の嫌悪 妹尾 尻尾 @sippo_kiri

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