一見ただの追いかけっこ。しかし。

 今よりさらに文明が進み、機械化が当たり前になった時代。
 うだつの上がらない中年刑事と、旧タイプアンドロイドが追いかけっこをする話ですが、当然それだけではありません。

 仕事の成功とプライドをかけた追跡劇は、アンドロイドの主である御令嬢の失踪事件に端を発します。
 なぜお嬢様は失踪してしまったのか。
 機械だけに、決して感情を見せぬアンドロイドはなぜ逃げるのか。
 最後に明かされる謎の答えに、思わず笑みが漏れます。

 コメディタッチで描かれて行くこの作品ですが、主人公の境遇や思考に、「仕事のありかた」というテーマが見えます。
 重労働で過労死してしまった父親とのやりとりを徐々に思い出していき、最後には確固たる結論を見出す主人公は、「社畜」などという呼称がすっかり定着してしまった現代社会に一石を投じているように思います。