生々しく、ぬめりと体にまとわりつくような文体に感じました。その文体は「私」の五感と思考をダイレクトに伝え、トロトロと流れていきます。この文体、好きです。
といったことを書くと、そういった作品をまだ私が読んでいないだけじゃないのかとか怒られてしまいそうですが……。夏のけだるさとか、足下のおぼつかなくなってしまった不快な感じとか、そういった所がとても分かりやすいです。描写とは対照的に、この物語は一人称視点で進められているということもあり、会話が非常に少ないのも魅力の一つかと思います。周囲を詳細に記すことによって、周囲の状況を語り部がどう感じとっているのかの描写があることによって、逆に語り部の内面がどんどん掘り下げられていく……こういうの凄く好きです。
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