第4話 <万能科学終了のお知らせ>
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科学力の差は武力の差だった。
それは決定的な差となり、地球人と異星人の明暗を分けた。
質より量。異星人側は少数であり、地球側は多数であることのアドバンテージはあった。
しかし、桁違いに異なる質の前には量の違いなど……敗北までの時間稼ぎでしかなかった。
―――すでに勝敗は決した。
地球人側に逆転の目は無く。異星人側の勝利は揺るぎなきモノとなっていた。
―――当然の結果だ。
異星人―――銀河帝国は、宇宙の覇者である。
広い宇宙でも屈指の文明レベルを誇り、圧倒的な科学力を背景にした銀帝軍を有する。
銀河系を中心に、複数の星系を属国として束ねる大帝国……それが、銀河帝国なのだ……。
地力で宇宙を開拓する力すら持たない。辺境地……銀河帝国星系図から見て2525番の太陽系第三有人未開惑星に住むモノに勝ち目などあろうはずもない。
否。地球人だけではなく、この宇宙全体を見渡しても……銀帝軍に勝てる知的生命体は存在しないだろう。
しかし、ならばコレは何だと言うのか?
突如現れた“魔王”を名乗る怪人。
捻くれた角らしき器官を有し、地球人基準では顔色が悪いを通り越して。病的なほどに青ざめた肌。
ギラギラと朱に輝く虹彩と、闇色の材質不明の王衣に身を包んだ正体不明の怪人。
そは、単騎で銀河帝国軍と交戦を始めた。
「フワーハッハッハッ! たかが熱線如きで、我を倒せると思うでないわっ!!」
2m超の巨漢の怪人めがけて、無尽機兵からレーザーが放たれた。
地球連邦が誇る。最新鋭の戦車装甲をも溶かし穿つ。死の光線であったが……魔王を包む、闇色の光学的なバリアーと思しきモノにあっさりと遮られ、魔王は痛痒を感じること無く嗤う。
「そら、おかえしだ!
―――
魔王の指先から、螺旋状のレーザーが放たれる。
放たれた光線は、対光学処理を施されている筈の装甲をあっさりと打ち抜き、無尽機兵を爆散させる。
「脆い! 脆すぎるわっ!!」
あり得ない光景。想像を超えた事象を目撃した異星人は……地球人もだが、例外なく固まり動揺する。
だが、仲間……同型機を討たれた無尽機兵の
原理は不明だが、レーザーが効かないと判断するやいなや、重力慣性制御を活かし急速に魔王に近づいた。
そして、対物破壊用に用意された単分子ナックルを魔王に叩きつける。
しかして、亜音速で繰り出された超振動を伴う。あらゆる物質を粉砕してのけるはずだった超科学の拳は……あろうことか、素手で受け止められてしまう。
「ほぅ……拳での勝負とは、魂なき愚物と云えど、粋というものを理解しているようだ……。
―――ならば、こちらも拳で答えてやろうではないかっ!! フンッ!」
返す刀ならぬ、拳を無造作に振るい。魔王は無尽機兵を殴り飛ばす。
揺らめく瘴気を纏った拳は、モース硬度にして17を示す。地球上ではあり得ないほどに堅牢な材質で構成された装甲板を撃ちぬいた。
生物で言う胸を穿った魔王は、心臓……母艦からのエネルギー波を受け、無尽蔵の出力を生み出す。
無尽機兵の名の由来ともなった波動エンジンを掴み出し―――
「コレが心臓か? ふむ、心の篭もらぬ臓器では……風情が無くてツマラン」
―――握りつぶした。
ポムっと、何処か間の抜けた音を残して、辺りは静寂に包まれた。
コレは、なんなのか?
アレは、なんなのか?
ソレは、なんなのか?
マオウとは、なんなのか?
喧騒に包まれた世界は今、未知なる存在を前に鼓動を止めた。
「……ふむ。小物を潰した所で埒が明かぬ」
思考が止まり、誰しもが息を呑む止まった世界に、魔王の重厚な声が響き渡る。
「それと不愉快だ。
―――我を……見下ろすでないッ!!」
ゆっくりと手を天にかざした魔王は、自身を見下ろす数万の目を睨み返す。
そして、振り下ろされた神の……魔王の鉄槌は、空に浮かぶ宇宙艦隊の全てを地上に叩き落としたのであった……。
魔王さま、銀河を征く! -ハイファンタジーVSスーパーサイエンス- みみみみ @mimimimi
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