第3話 <異世界からこんにちは>
銀河帝国を名乗る異星人による、地球侵略の根拠となる……『元有人惑星“火星”の現地民虐殺』……について詳細が判明した。
どうやら過去の地球で、ムー帝国人とタコ型火星人との恒星間バトルが有り。ともに相打ちで滅んだらしい。
もちろん、現在の人類と、ムー帝国人とは一切関わりはない。
完全に言いがかりであり、侵略のために用意された大義名分であることは明らかである。
しかし、地球側と異星人側との戦力差は絶大であり、アリと巨像どころか……ミジンコと鯨と言うべきほどに差があった。
戦端が開かれてから三日と経たず地球側は窮地に陥り、進退窮まった結果。
人類史上初の多国籍連邦軍が組織された。
これは、他国、民間、犯罪者からテロリストまで、全人類が争いを止め。
差別も区別もなく、味方同士として手と手を取り合った歴史的快挙でも有った。
これは、素晴らしい。
まさに、感動的だ、
―――だが、無意味だ。
「メディぃいっっくッ!!」
「ふっ」
「おぅ……ジーザス・クライスト……」
「撃鉄を上げろ! 怯むな! そこ! 弾幕薄いよ! なにやって……ぐふっ!?」
「ウェッジ少尉!? 糞糞糞っ!! アパム伍長! ナパーム持って来い!」
「駄目だビックス中尉 ココはもう持たない プランBはどうした?」
「ああ? ねえよそんなもん!! ……プランEならあるけどな!」
「Cじゃないのか?! ……で、どうするんだ?」
「プランESCAPE! にっげるんだよ~!!」
「中尉!? ……チッ! 撤退っだ!! 防衛戦をFポイントまで下げるぞ!」
「「「ラジャー!」」」
「ここも直に腐海に沈む……」
「もう、お祖母ちゃんたら……はいはい避難するわよ」
「戦車並みの火力と装甲。それでいて機動力はバイク以上で、短時間だが飛行も可能……反則だろJK」
「まさしく白い悪魔を量産したらこうなったって感じだな……」
「ちぃ兄! ちょぅ兄! ウンチしてないで逃げなさいよ!!」
「それを言うなら薀蓄だ、愚妹よ」
「それに戦略的撤退の準備は万端だ。流石だと褒めるが良い」
「……準備って、マンホール?」
「うむ、地上がダメなら……地下を行けば良い」
「パーフェクトなプランであり、天才的な発想だろ……う……?!」
「ねぇ……どうみても増水してて、通れそうに無いけど?」
「ふむ、ならばプランBだ」
「ああ、プランBだな」
「……プランBあるの?!」
「プランB……バックステッポでバックレる! 天から授かった二本の足で!!」
「倒置法とは流石だな……さあ、走るぞ愚妹よ!」
「ちょ!? まってよ!? バカ兄! 愚兄! クソ兄っ!!」
「おうどんたべたい」
「逃げちゃ駄目だ! 逃げちゃ駄目だ! 逃げちゃ……って、こんなの逃げるしか無いじゃない!?」
「……ひっく……ままぁ……どこぉ……」
「逃げ遅れか!? ……糞糞糞がっ!!」
「中尉!?」
「膝に矢……じゃねえけど食らっちまったか……アパム! そのガキ連れて先に行け!!」
「ラジャー!」
「いいから、オレを置いて早く逃げ……って、早っ!? 糞糞糞っ! 伍長ぉぉ! 少しくらい躊躇しろよッ!?」
三本の矢、三人寄れば文殊の知恵、勇気と友情は少年マンガの王道であり。世界が一つとなった事は素晴らしい。
しかし、テクノロジーの差が大きすぎた。
とは言え、銀河帝国側が送り込んできた四足歩行型無人殺戮兵器のスペックは、そこまで高いわけではない。
装甲は堅いが、対戦車ミサイルは十分に効果があり。
主力兵器であるレーザー砲は、粉塵が舞い、大気汚染で汚れた地上では著しく、火力と射程を落とした。
だがそれでも、どこぞのキモい動きの四足歩行ロボットとは比べ物にならないレベルの機動力を持ち。
性能が減衰してようとも、弾切れ燃料切れを一切起こさずに24時間無補給無休憩で動き続けて、レーザーを乱射する無人兵器は凶悪すぎた。
しかもそれが、歩兵レベルで宇宙から無数に舞い降りてくるのだから手のつけようが無かった。
短期間で組織された割には、精鋭が揃い。最新兵器を惜しみなく投入した連邦軍だったが……劣勢を覆すことは出来ず。
人類の命運は尽きたかに思えた……。
人々は神に祈った! ―――しかし、神は答えない。
人々は悪魔に縋った! ―――しかし、悪魔も答えない。
スーパーヒーローは実在せず。
正義の味方は幻想の中にあり。
勇者は超科学力の前に蛮勇と堕ち。救世の英雄は2階級特進した。
しかし、彼らの切なる助けを乞う声に答えるモノは、この世界には居なかった……。
「よかろう! その願い……我が聞き届けよう!!
―――この世界は、我のモノである。
地球人も、異星人も……等しく平伏すが良いっ!!」
―――そう、この世界には居なかった。
答えたのは“魔王”
異世界からの“
かくして地球は、さらなる混乱に包まれたのであった……。
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