第19話
そうだ。僕が知りたかったことは一つ。
彼女が僕を友達だと思っているかどうか。
それだけだった。
だからこそ僕は、自分が誹謗中傷されるリスクを背負ってまで裏サイトを作ったんだ。そして広まりさえすれば、彼女なら必ずメールの存在に気付く。そのメールを彼女が僕に送ってくれるかどうか、それを確かめたかった。
言葉以外の行為で示せば、友達だと証明できる。
――僕は僕の考えに準じて行動しただけだ。
最後は勢い余って聞いてしまったけど、僕としては彼女が僕にこのメールを送ったことが分かれば、それで充分だった。
しかし、彼女が匿名で送って来さえしなければ、わざわざ彼女にこの話をしなかったのに。そうすれば、僕が作ったこともばれなかった……はずだ。
まぁ、ばれた時のために、嘘の理由を作れるようにしたからいいんだけど。
それにとりあえずは、彼女には本来の目的は隠せ仰せたみたいだ。
こんなことがばれたら、恥ずかしくて死にたくなる。
いや、どちらにしても、こんなことしている時点で、恥ずかしいことか。
「っははは」
「な、なんだ君は? 急に笑い出して。思い出し笑いか? 思い出し笑いをする人間はエロいと相場が決まっているが、君もそうなのか。不潔だな。これからは私から半径一万五千キロメートルは離れて暮らしてくれ」
「なんですかその言われ無き曲解は!? しかもそれだとブラジルくらいしか住めないよ!!」
「違う。二次元で考えるな」
……。
………。
「――地球に居られない!? っつか、そんな小難しいボケに突っ込めるか!!」
「突っ込んでるじゃないか」
「いえ、間があった時点でツッコミとしては失格です」
「ふーん、そんなもんかね。まぁいいや。いいかげん帰るとしようか」
「あ、はい。そうですね」
彼女の後をついて、僕も歩き出す。
僕が隣に並んだところで、「ああ、そうだ。帰る前に聞いておかないとな」と、彼女は僕を見て言った。
「最初、わざわざ私にこのメールを送ったのは何故だ?」
「いや、読み上げるより分かりやすいと思ったんですが。……何でそんなこと聞くんです?」
「君と同じだよ。理由を知りたいだけだ」
……って、ばれてる。
一体、何処で気付かれた?
いや、そんなことよりも、何でこんなことを聞いたんだ。
もしかして、僕が確かめ合って初めて友達だとか言ったから?
……いや、違うな。
この顔は違う。
にやにやと底意地の悪そうな顔をする彼女を僕は見る。
多分、仕返しだろう。お返しかもしれない。
なんて言葉を換えても意味は同じだった。
だから僕は、彼女の言葉を借りて、お返しした。
「それは愚問ですよ」
僕と彼女の都市伝説 駒部トシ @comicbe
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