第115話 戦闘後
意識を失っていたのでまったく覚えていないが、西都市までの車の移動は運転講習を脇で見ていた師匠がやってくれたらしい。それとは別に馬車を飛ばして医者のところにかつぎ込んでくれたのはミリーと誰かだったとか。感謝。
医者の診断は全治一ヶ月程度。肋骨と左腕にヒビ。打撲に裂傷が多数。
裂傷といっても爪にやられた傷じゃない。吹っ飛ばされて地面にたたきつけられたときのものだ。左腕を吊り、胸部は動かさないように板をあてがって包帯で固定された。
不便だが生活に支障はない。いや、かなり支障がある。最低限の生活ができるだけだ。
師匠も仕事はいいからおとなしくしておけと言ってくれている。
裂傷の深い部分は縫われて油紙を貼って包帯で固定。顔にも傷があるのでちょっと薄着のミイラ風だ。
手の甲と腕に傷跡は残るようだが、顔の傷は目立たなくなるだろうとのこと。サンキュー、ドク。
どうしても吹っ飛ばされた前後の記憶が思い出せない。それどころか戦闘が始まったあたりからの記憶がすっぽりと抜け落ちている。接近されて爆弾を使ったことは痕跡から分かったが、その記憶は一切ない。接近されるまでT.A.R.で何匹かを殺したことはかすかにおぼえているが、おれを攻撃したラストの熊モドキについては空白だ。接近されてか弾切れかでショットガンに切り替えたのだろう。それで潰しきれずに爆弾の出番。効果が薄かったのか一撃食らって飛ばされたのかな、くらいの推測だ。
同時に一緒に戦っていた師匠やミリーがどういう戦い方をしていたかも思い出せない。必死だったから目に入っていなかった、ということなんだろう。
「そっちに二匹抜けたぞ!」みたいな警告があったのはわずかに覚えている。
深く考えるのはやめよう。どうせおわったことだ。もう5日も過ぎている。
ショットガンは壊れて修理の部品待ち。北都市に買い出しに行く余力がベックマン銃砲店にはないので北都市の発明家、ジョン・トヨダの西都市訪問のついでに依頼したと聞いた。あっという間に連絡できるのは電信のおかげだ。その連絡も北都市のシラカベギルド長にハグレっぽい群れ出現の連絡のついで。
返信はまだだがハグレ狩りとまではいかないが防衛強化はしなければならないし交易はある程度は滞るかもしれない。ポンプショットガンが直るのはまだしばらくかかるな。そもそも体を治すのが先なんだけど。
異世界技術屋、ガンスミスになる あのワタナベ @Howard_P
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