好きでいる、ただそれだけがこんなにも苦しいなんて。

カクテル言葉に乗せて紡がれる、防衛省を舞台にした甘さ控えめ、ビターな大人の恋愛物語です。
ストーリーは、主人公の美紗がバーテンダーの征を相手に、終わってしまった恋を語っていく形で進みます。
しっとり落ち着いた文体なので、夜に読むのがおすすめです!

カクテルと防衛省という異色の取り合わせが、この作品の個性を引き立たせていますね。
美紗が働く職場の描写がかなり詳細で、どこまでが創作なの? と思わず考えてしまうほど。
そのためとてもリアリティがあり、まるで自分がその場に居合わせているように思えます。

恋愛小説ですが緊迫感のあるシーンが多めです。
美紗が日垣さんに惹かれるきっかけというのがまたシビアなシチュエーションで、息を飲んでしまいました。
妻子ある人を好きになってしまった主人公の葛藤が胸に迫ってきて、非常に切ないです。

冒頭からして幸せな結末にはならないのは明白ですが、これから甘い展開はあるのでしょうか。
そんなところにも期待して、この先の物語を楽しみにしています。
個人的には謎めいている征さんの本性が気になって仕方ありません…!

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