今思うと、タイトルを見た瞬間からカタルシスが始まっていました。
定期的にこういう作品を読むといいかもしれないなと思いつつ読み進めましたが、最後の「もしも、私に少しでも同情する人間がいたら注意してください。」(苦笑)
鬱屈したものは誰しも持っていると思うので、そういうものを発散させられる作品って必要だし大事だと思いました。
(大丈夫です、私はちゃんと発散してるので事件起こしたりしないと思います。)
読みながら太宰治の『人間失格』を思い出しましたが、あそこまでぐでぐでではないので個人的にこちらのほうが好みです。
主人公と性格が似てるところがあるのかな……(苦笑)
『遺書』というキャッチコピーどおり、これは1人の男の或る顛末を描いた作品である。
いや、もしかしたら作品ではないのかもしれない。何故なら、文章のどこにも「これがフィクションである」とは明言されていないのだから。
どこにでもいるような、どこにでも落ちているような、ドロップアウトしてしまった男の独白。綴られていく言葉は、虐げられた自らの経験と浅慮を語るうち、やがて更なる深みへと沈んでいく。
そして、それが如何なる人間にもけっして赦されることのない領域に踏み込んだ瞬間、物語は読者の足を掴み、男の持つ暗闇の中へ引きずり込もうと一斉に襲い掛かる。
少しでも共感した瞬間に、もう二度と戻れなくなるだろう。
何故なら――「これがフィクションである」という保証はない。
1人の男の口を借りた瞬間に、虚構と現実の境界線は引かれることなく消えてしまった。
明日は我が身。
物語を読み終えた瞬間、暗闇はぐるりと私たちを取り囲む。