触れあう指よりも、見つめあう瞳のほうが、きっと――ほどけない。

ボーイズラブという領域から見れば、僕は門外漢でしかないのですけれど、読むこと書くことという観点では、言えることがあるだろう、(その詳細の記述は控えますが)言ってもいいくらいのことは積み上げてきただろう、そう思うゆえに、書いてみます。

冒頭の言葉をいきなり裏切るようであれなんですが、男性キャラクターふたり、その人柄や感性が、物語にとって“適切な”ファンタジーの中にある、それが読者に心地よさをもたらす、そのように思います。
つまりは、現実の男性像とは離れているわけですが、それが正解なわけではなく、そっちに合わせればむしろ間違いとなる、と、それを作品の中で示してもらえていると思うのです。そしてそれは、ボーイズラブに限ったことではないんです。“適切”の度合いが、それぞれ違うだけです。

物語を読むことの昂揚とは別に、最後まで、安心しきって読めました。それは、ハッピーエンドが予想されるからじゃなく、言葉のひとつひとつ、言い換えれば、一人称ですから、視点となっている主人公のものの考え方、感じ方、そういったものに、優しさが滲んでいるからではないでしょうか。

そんなわけで、皆様、心がほんのり温まりますよ。
そして、“ほんのり”の温もりこそ最良であると、そんなふうにささやいてくれます。焦がされるばかりでは見えないものもあると、思ってみてもいいじゃないですか。