誰かの思いを解き明かす、孤独に満ちた謎物語【★】

 
 “姉”という主演女優を巡って、人々の思いが錯綜する様は、まさしくミステリー小説の謎解きのよう。
 
 不思議なほどに、ここにいる登場人物達は、互いのことを“知らない”。家族でさえも。その孤独を、いなくなった“姉”との繋がりを思い出すことで埋め合わせるかのようにして、物語は収束していく。終着点にカタルシスや幸福は見えない。ただ、静かな“納得”が横たわるのみだ。
 深く静かなため息のような“納得”。その余韻が、妙に心地良い。

 だが、この物語の本当の着地点は、もっと高みにあるようにも思え、その一抹のもったいなさに歯噛みをしているのも、一読者としての事実なのである。