(作品が改まったので改めてレビュー)
キャッチコピーに採られた”白露かな世界の果てもきつと白”が私にとってはまさに白眉。
「世界の果て」とスケールの大きな言葉を用いながら、しかし句全体が掌に乗ってしまいそうな儚さが感じられる。
大きく広がった視界が、一瞬で反転収縮し、目の前の「白」に閉じ込められてしまうような、眩暈感すら覚える句の世界観が素晴らしい。
その反転、うらはらさは、タイトルと作品全体にも通じている。
春に始まった句は季節を巡り冬で閉じていくが、冬はやがて春へと繋がっていく。いみじくも”寒露”の句で詠まれたように、歳とは重なっていくものだ。時は反転するかの如く、もう一度繰り返す。それが例え、”終”の宿命に閉ざされた時だとしても。
また劈頭の一句と、結びの一句にも、それぞれに「うらはらさ」が表れている。そのことに気付くと、尚更に結句は発句へと回帰し、線ではなく円環の一年が完成するようにように思えるのだ。
一筋縄ではいかないこの世界観が、本作の詩情の源泉となっているのではなかろうか。