うん、良かった。読んでから少し打ちのめされたような感じになって言葉が出てこなかったんだけど、
やっぱりいい作品だなあ、と思うのでレビューしてみる。
最初は長い比喩とかが多くて改行もあんまり無かったので読みずらそうかな、
とちょっと思ってたんだけど、読んでいるうちにどんどん物語の世界に引き込まれて、
気が付いたら20話6万文字、没頭して一気に読んでいた。
特に強く印象に残ったのは動物園での象の話の部分。あと日葵畑の中を歩くシーンもなんとなく好き。
この話にテーマと呼べるものがあるとしたら「モラトリアム」この一言に尽きるんだけど、
実はこのテーマってすごく抽象的で難しいと思う。それを作者は見事に描き切ってる。感情のわずかなぶれ、
心に刺さったちいさな棘みたいなもの、空虚感、そんなものがひしひしと迫ってくる。
「ひとりぼっちのソユーズ」はヒロインとの関係性がすごくよく描かれた美しい作品だけど、
この小説は友人たちとのかかわりもそうだけど主人公の内面についてかなり掘り下げられており、
より主人公の思考や考えが感じられて良い作品だと思う。
作者の方はこの作品を「実話じゃなくて創作だから」って言ったけれど
まるで本当にあった話のように生々しく感じられた。凄い。
この話をもっと多くの人に読んでもらいたい。そしてこの作品の素晴らしさを味わってほしい。
素晴らしい純文学です。ネット小説には珍しい正統派の文学でした。僕も「蜂と蝶」をモチーフにした音楽の私小説を書いたので意味深なタイトルに惹かれ拝読しました。ジャズでカクテルの薫り。音楽と文学の知識に脱帽です。僕もヘミングウェイに憧れていつかライフルで頭をぶち抜くんじゃないか、と。ラストの着地まで、一切妥協する事ない卓越した描写に圧巻です。音楽と文学とアルコール。どこか冷めたような人生観、哲学のようなものを感じ、ただ一言、格好いいです。いずれこのような作品も評価されると思います。純文学がお好きな方、ぜひご一読下さい。オススメです。