近くもないけどそんなに昔でもない昭和…
その初期を舞台にした復讐劇…
なのですが、この日本は異世界で私たちが暮らす世界とは違うようです。
厳しい身分制度があったり、貴族たちは罪を犯しても裁かれなかったりとかなり理不尽。
その中で横行する殺人や虐待…不吉な影と不可思議な者たち。
陰惨ながらも描写は耽美で退廃的で、ぐいぐい引き込まれます。
特にラストの章は圧巻です。
ネタバレになるので「誰が誰を」とはいえませんが、悪い輩はばっちり始末されるのですかっとします。カタルシスは抜群です。
しかし勧善懲悪、正義の鉄槌ではなく…いうなれば勧悪懲悪のような。
悪×悪の仁義や情なんかみじんもない潰しあいなのです。
ところどころに張られた伏線とミスリードの数々…
癖がありすぎる登場人物ととても面白いダークファンタジーです。
楽しく読ませてもらっています
どのキャラも魅力的ですが
なんといっても主人公の咲が一番好きです
若く美しくなんといっても妖しく
濃厚なエロスの気配があり
とても大人びているけれど
ほのかに哀愁がにじむ
まさに悪の華
深い業をもつ彼女ですが
くすりと笑える部分もあり
シモンとさくらの存在が
救いになっています
5章は最高でした
咲のセリフの一つ一つにしびれました
強固な身分制度がある社会
はびこる横暴と理不尽
正義は存在しても力を持たない
敵を倒すには
手段を選ばず情けをかけず殲滅するのみ
悪道だからこその非道
非情ゆえの悪道
咲がいった
「悪を倒せるのは同じ悪だけ」
これがこの小説のすべてを
表している気がします