詳細レビュー01

現代日本における魔女狂宴(ヴァルプルギス)

(※ネタバレも含みますのでご注意下さい)


・作品名

『現代日本における魔女狂宴(ヴァルプルギス)』

・作者名

清水那珂

・キャッチコピー

「彼らの紡ぐ物語は神すら予測不能。」

・あらすじ

 個々が人間を遥かに超越する能力を持つ魔女、それは存在そのものが厄災のようにして虐げられて来た。

 厄災である魔女を討伐する為に人類は立ち上がり、各国に魔女討伐部隊『特殊災害対策部隊』の設置を義務付け日本にも例外なく部隊は設置される。

 魔女の存在がありながらも平和だったはずの日本、その佐野間市に突如人を食べるという猟奇的な連続殺人を行いながら渡り歩く魔女“人喰いケルベロス”が現れ暴虐の限りを尽くし始めた。


 唯一魔女と戦える力を持つ魔女狩りでありながら力を放棄した少年“五百蔵彰介”。

 彰介に近付く謎の同級生"百目鬼栞”。

 魔女の駆逐を掲げる組織『特殊災害対策部隊』に所属する女性“天音光莉”。

 魔女により構成された謎の集団"ガスマスク”。

 街を取り仕切るヤクザ“甲蘭会”。

 人間を食し続ける猟奇殺人鬼“人喰いケルベロス"。

 多種多様の者達が生きる佐野間市を舞台に巻き起こったケルベロスによる猟奇殺人事件。

 復讐の為にケルベロスを追う者、正義の為にケルベロスを追う者、ケルベロスの影に見え隠れする影。

 高校生も、謎の集団も、国家組織も、ヤクザも、暴走族も、天狗も、死人も、人々の思惑が一つの事件を皮切りに絡み合い始めた。



 街を襲う災いを仕組んだのは神か、人か。




(総評)

 記念すべき最初の詳細レビューです。


 この作品は万人にヒットする金の卵というよりも、私の好みにダイレクトに入り込んできたため、作者の 清水那珂氏に許可を頂いて、詳細なレビューを書かせて頂きます。


 舞台は現代日本……そこに超人的な能力を持った『魔女』がいる設定。その中でも同族の魔女すら殺す『人喰いケルベロス』によって、全てのストーリーは始まります。


 何よりもまず、物語冒頭から絶大なインパクトを出して登場する『ケルベロス』が素晴らしい。一気に読者を作品に引き込みます。ケルベロスとは双子の魔女姉妹ユリアとマリアで、『食物連鎖』を信条に他者をモグモグしていきます。しかも犬や狼のようなケモ耳尻尾付きで。猟奇的ワンワンエロ幼女双子。ハイもう私の趣味を狙い撃ち。漫画『BLACK LAGOON』に登場するヘンゼルとグレテールを彷彿とさせますが、また違った趣があってイイ。すごくイイ。


 そんなケルベロス姉妹に、『魔女狩り』のエースであった五百蔵いろおい悠希ゆうきは殺されてしまいます。この悠希という人物がまた重要。作中では既に故人ですが、主人公の実兄でした。

 主人公の五百蔵彰介は兄の細胞から魔女狩りの能力を引き継ぎますが、何故か戦えず。彰介は悶々としたものを抱えながら、ケルベロスの起こす殺人騒動とは遠いところにありました。

 あまり多くを語るのはアレなので控えますが、既に死亡した人物であるのに、多くのキャラに影響を与え続ける『悠希』という存在が凄い。現実では何の意味もなくアッサリ死ぬこともありますが、フィクションでのキャラクターの死は、何かしら作品にとって意味があってほしい(私の思想)。それこそ、ケルベロスの脅威を見せ付けるために虐殺されるモブの死も、無意味ではありません。しかし主人公の兄貴である彼の存在が、物語を起爆させ多くのキャラの言動を左右させているのが秀逸でした。そこも私の好みにマッチしていました。


 さてそんな悠希の死から始まって。多くの人物や組織が、それぞれの思惑を持って行動するのが、この作品最大の特徴です。群像的というかバトルロワイヤルというか。読んでる最中は『東京喰種』や『デュラララ!!』が脳裏に浮かびました(※個人の感想です)。

 しかしそれだけに難点もあります。多くの勢力や登場人物がひしめき合うために、それぞれの掘り下げが浅いというか、印象を薄くしてしまっています。どのキャラも個性的なのですが、個性的な色がたくさん集まると、全体の色がぼやけて見えてしまうような。これは群像劇という構造上、どうしても避けて通れない問題だとは思うのですがね。

 折角魅力的な冒頭で読者を引き込んだのに、勢力やキャラの登場で盛り上がりの色が薄まってしまいます。


 その弊害もあってか主人公の彰介君も、ちょっとの間読者の前から姿を消します。「オイオイ主人公が活躍してねーぞ」と思うこともあるかもしれません。でも大丈夫。ちゃんと見せ場があります。

 兄・悠希の後輩でもあった天音光莉あまねひかり。彼女も悠希の死に突き動かされ、そして療養中の妹のためにも、ケルベロスに無茶な戦いを挑みます。

 そこに偶然居合わせた主人公。復讐なんて意味がない。兄貴の死は悲しいけど、同時に兄へのコンプレックスも抱えていた彰介は、偉大な兄の存在や魔女狩り達の戦いからどこか距離を取っていた。

 しかし交流のある光莉の窮地を前にして。彼女がもし死ねば、光莉の妹が深く悲しむ。『取り残される側』の痛みを知っている彰介は、ついに『魔女狩りバトル』に本格参戦します。

 ともかく第六節の盛り上がりが凄い。胸熱展開を好む私としては、思わず「ヒューッ!」と主人公を賞賛したほど。


 主人公も戦いの渦のど真ん中に突入し。これからの展開に目が離せない注目作です。『1つの街で、色んな勢力がドンパチする』。このワードに少しでも心惹かれた人は、きっと彼ら彼女らの『魔女狂宴』に引き込まれることでしょう。

 私も連日のレビュー活動で、グリーフシードが既に真っ黒になった魔女として「サバト!サバト!ヴァルプルギス!」しておりますので、より多くの方の参席を心待ちにしています。




※何度も書きますが全て個人の感想です。貴方にとっての面白さを保証するものではありません。

加えてアホな私が誤字や設定の認識違いをしておりましたら、レビューにてお叱り下さい。


※作品は現在非公開となっており、『小説家になろう』にて連載しているそうです。

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