第2話いじめとそれから……




 とりあえず悟は、職業が回りから村人と認識されているため、錬成士と魔物使いの使える技を使わないことを決めた。

 なぜなら、村人であるにも関わらず錬成などが出来るということは、職業が村人でなく、隠蔽のスキルを持っていることとなり大騒ぎになることが目に見えていたからである。


 それに、錬成士と魔物使いは、異世界の中でも最後から数えたほうが早い非戦闘職業であり、使えないからといってそれほど困らないからだったりもする。

 だからといって訓練をしないわけにもいかなかったので、村人らしく、短剣を用いて訓練をすることにした。


 シュ シュと風を切るような音が短剣を振るう度なる。(村人の訓練って何をすればいいんだ?あのとき職業一緒に調べとけばなー)と思う悟だった。


 しばらくして、回りに人がいなくなったところで、足音が聞こえ、数人が近づいて来るのがわかった。


 「おい、こんなところで訓練か?

 最弱さん?」と嫌みったらしくリーダー格の人物が声をかけてきた。

 「なんか用事でもあるの?桐谷、今訓練中なんだけど……。」と少し高圧的に言葉を返した。

 「いや、用事ってほどでもないんだが、最弱で、無能な悟くんに強くなってほしくて、一緒に訓練でもどうかなーって思ってさ。」ニヤニヤしながら桐谷 蒼井は言った。回りの取り巻きたちも顔をニヤニヤして見下すような目をしている。

 悟が、「いや、遠慮しとくわ」と言いかけたとき、桐谷が火属性初級である魔法ファイアーを使ってきた。

 悟は、慌てて避けると桐谷をにらみ返す。

「危ないじゃないか。もし当たってたらどうする気だったんだ。」と悟は言うが、取り巻きである霧咲 亮太は、鼻で笑って「もし当たってたらどうする気だったんだ。 だってさ、当てるために撃ってるんだけどな。」と他の取り巻き達と笑いながら言った。


 桐谷

きりたに

 武司

たけし

は、顔こそ整った顔つきをしているが、中身が最悪なやつで霧咲

きりさき

 碧

あおい

たちとつるんで自分より弱いものにいじめをしていた。大方自分達よりも弱い人物が近場に現れたから、弱い自分をいじめようとしていると悟は気づいた。


 悟が、霧咲の言葉に呆然としていると、複数の初級魔法が目の前に飛び交い一瞬ぼーとした悟にごく一部命中し倒れてしまった。どうやら町の中ではダメージを受けないらしく魔法によって倒れこんだ悟に次々と魔法が撃ち込まれ苦痛をあげた。


 次々と魔法が撃ち込まれ桐谷が笑いながら次の魔法を撃とうとしたとき、一人の女の子が近づいて悟以外のメンバーに、強力な重力魔法を展開させた。

 (確かあの子は……)悟は、助けてくれた金髪の女の子には見覚えがあったが、話したことはなく、名前すら知らない子だった。


 その女の子は悟を庇うように立つと、「で? この状況はなんなの?」と桐谷に、睨むように話しかけた。


 「く……訓練だよ。皆で訓練してたんだ」と桐谷が苦しい言い訳をする。

 それと同時に桐谷たちから苦痛の色が見え始めた。悟は、恐らく重力魔法の効果を上げたのだろうと推測した。

 「へー、私には貴方たちが、一方的にいじめて楽しんでいるように見えたんだけど」と魔法を強めながら言った。

 顔が苦痛で広がると「すまない、もうこれ以上はしないから許してくれ」と情けない声で謝った。

 「今後二度と私の悟くんに近づかないで! もし今回のようなことがもう一回あったなら、次は容赦しないから!」といって魔法を解くと、桐谷達は逃げるように去っていった。


 自分を助けてくれた女の子を良く見ると、何で同じクラスメイトで、こんな美少女がいるのにわすれていたんだろうと思うくらいの美少女だった。


 髪の毛は金髪、目の色は見てるだけで吸い込まれそうな青色をしている。背はあまり高くなく、出るとこは出ていて、巨乳とはいかないまでも、それなりのものを持っていた。


「今後二度と私の悟くんに近づかないで! もし今回のようなことがもう一回あったなら、次は容赦しないから!」が頭のなかを木霊する。

 (私の悟くん? どういう意味だろう)と考えながら女の子の方を見ていると……


 「あの、そんなに見られると……、それとお怪我はありませんでしたか?」先程とは変わって、もじもじしながら、さっき立ったばかりの自分を上目遣いにみてくる。それと共に胸が強調され、凶器と化していた。


 思わずそちらの方に目を向けてしまうのを堪え、目を見返し、「大丈夫だよ。」と強がって言ってみたが、今にも倒れそうなほど痛みが増してきていた。


 「良かった。ご無事でなにy……」

少女が、言葉を言い終わる前に悟は、気を失って倒れていた。


 目が覚めたのは、真夜中の3時頃だった。周囲を見渡すと見たことのない部屋が広がっていて、そして隣には、助けてくれた金髪の少女が、すやすやと寝ていた。


……………………

………………

…………


 !?


 悟は、目を擦り現実であることを再確認する。この状況……、ヤバい誰かに見られたら無防備に寝ている少女を、襲おうとしている男子の絵にしか見えないと思いベッドから離れようと思い、ベッドから降りようとすると……


「……ァ"ア"、何逃げてんだ。殺すぞ。」と寝てるとは思えない、ヤのつく職業を思わせる声で言った。

(だ、誰? あ、落ちる!)助けてもらった時とは全然違う声に、びくっとなり慌てた拍子にベッドから転げ落ちてしまった。


………………「ん? 悟くん? 起きたの?」と少女は、半ば寝ぼけながら尋ねた。


 今更ながら少女の名前を聞くと、少し眠たそうに「椎名 美穂」とだけ言った。悟が倒れたあと、椎名さんが、自分の部屋まで運んできてくれたらしい。回りを見渡しても椎名さんしかいないので、なぜ二人ではないのかと聞くと、「自分は、クラス同じじゃないから」と返ってきた。


 悟の頭には?が一杯浮かんでいたが、要するに、悟に話があり、他のクラスから移動してきたところを、自分達のクラスと共に転移してきたらしい。だから、20人いた女子が21人となり、椎名さんが、一人部屋となったのだった。


 悟は、気絶する前に気になっていた一言が気になっていたので「そういえばあのとき「今後二度と私の悟くんに近づかないで! もし今回のようなことがもう一回あったなら、次は容赦しないから!」って言ってたけど私……」と聞こうとしたら、質問の意図が分かったのか顔をまっかにしながら

 「そ、それよりも、今は見回りの先生がいるから今夜は泊まって朝にいどうかしら?」という提案がなされた。


 先生というのは次の授業が、物理だったので、早く来ていた物理の若い一部の男子から人気が厚い女の教師が、巻き込まれて転移した先生の事だ。流石に、美少女と同じ屋根の下で一緒に泊まるというのは些か問題だと思ったが、先生がいるならと思い、そのまま眠りについた。


 悟は、朝早く起きると美少女と寝ているときにガリガリと削られていった自制心を回復すべく自室へ戻って行った。

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異世界転移した無能(さいきょう)は早速世界に挑むそうです @liner

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