第9話

 絶望覚醒したジャラテクをどうすればよいのか、多世界宇宙のみんなが考えた。少年の最初の夢、銀河皇帝になりたいを叶えてやろうかとした。ジャラテクは当然、無視した。

「どけ」

 『財宝わきいずる泉』をジャラテク一人に与えようとした。ジャラテクはそれも無視した。

「どけ」

 ジャラテクは食性宇宙の神との戦いへ。


 食性宇宙の神はいった。

「無数の富の集まるこの宇宙の何が不満だ。このわしに神殺しが来るなど考えておらん。わしは宇宙の外から来るものにしか備えてはおらんわ」

 ジャラテクは時空を無限に圧縮して斬る『無限の極み』で神に一撃を加えた。神には効かない。ジャラテクは、無限を二重に圧縮した『二重の一撃』で一撃を加えた。ジャラテクは生まれ育った宇宙の神を殺した。


 神を殺したと思ったら、平凡な創造神の系譜に名を連ねるものたちいっせいに姿を現した。

「神を殺しただけか。神を殺すなら、新世界を創造する準備もしておけ。なさけないやつだ。その程度の神殺しか」

 平凡な創造神たちの声が聞こえた。

 絶望していたジャラテクは、さらにつづく試練に心が灰になるようだった。

「我々、すべてが最高の創造神を探し、守っている」

 ジャラテクは、ひょっとしたらあるかもしれない自分のつくった宇宙を夢見て、願いごとでつくられた宇宙へ宇宙ワープした。


  10

 願いごとでできた宇宙。

 そこには、みんなの願いごとしかなく、幻覚のようにおぼろげだった。

 花吹雪、桜吹雪が空気を埋めつくし、まわりは桃色しか見えない。

 花びらの舞い落ちる大地にジャラテクは立ち続ける。虹とオーロラが同時に見えた。

 日食と月食が同時に起こり、よくみると数歩歩いた先は大滝の大瀑布になっている。どどどどどどどどっ、となりつづける。

 音楽。

 軽快で、高貴な歌が流れつづける。誰かが、この歌を歌いたいといって願った歌だ。

 願いごとでできた宇宙。

 空が欲しい。

 誰かが願った。

 海が欲しい。

 誰かが願った。

 金銀財宝輝き、美男美女が戯れ、神獣聖獣がとびかう世界。

 ジャラテクは祈りの石を空に投げる。

 メキが生き返り、二人で一緒に願いごとでできた宇宙に住んだ。

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神々に忘れ去られた形 木島別弥(旧:へげぞぞ) @tuorua9876

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