第8話

 多世界次元の研究の進んだ宇宙では、宇宙ワープの方法が確立していた。別の宇宙を異界視し、存在の確認された宇宙の代表を連れ、多世界議会を開いていた。ジャラテクたちが来たのは、多世界議会宇宙だった。

「いったい、いくつの宇宙が確認されているの」

 ジャラテクが多世界議会の職員に聞いた。職員が答える。

「実は、どれが宇宙なのかよくわからないので、数は数えられなんですよ」

「どうやって宇宙を観測するの」

「遥か彼方を観測すると、混沌を司るその原理があります。混沌を司るその原理の向こうにあるのは、この神は脆弱だ、です。我々の手が届くような宇宙は脆弱でしょう。そして、宇宙の外より来たりしもの、外なるものによって、干渉します。その反応から宇宙を観測するのです」

「食性宇宙を知ってる?」

「はい、知っております」

「じゃあ、願いごとの叶う宇宙は?」

「いえ、それは存じておりませんが」

「ふうん。じゃ、本当に願いごとが叶うのかどうかわからないね」

「あなたがたは特殊な宇宙ワープをされた方々なので、我々としても扱いに戸惑っておりますが、わたしどもの宇宙ワープなら、隣町に瞬間移動するように宇宙ワープできます。この宇宙は無数の宇宙の中継所なのです。それでは、一度、多世界議会に参加してください」

 そして、多世界議会に参加した。


 議長がいう。

「食性宇宙は暴食宇宙となり、貴重な文化遺産を破壊している。これは許されないことだ。暴食宇宙を消滅させ、『財宝わきいずる泉』を我々で保護すべきだと思う。そのため、暴食宇宙への軍事侵攻を提案したい」

 族長カノウが反論した。

「ひとつの宇宙が己のありたい形で存在して何が悪い」

 ジャラテクもいう

「暴食宇宙は珍しい宇宙だ。珍しい宇宙を守るのは良いことだと思う」

 アーシスはいった。

「ちょっと待て。悪なる宇宙を滅ぼすだけで終わり、被害となった宇宙への救済はないのか」

「食性宇宙が食べた宇宙は価値あるものはほとんど『財宝わきいずる泉』に残る。滅んだ宇宙を蘇生させることはあるまい」

 ジャラテク、メキ、カノウ、アーシスの四人は小声で話した。多世界議会は『財宝わきいずる泉』を狙っている。

「多世界議会は悪だ。やるぞ」

「よし」

 そして、四人は多世界宇宙を敵にまわし、戦い始めた。


 族長カノウが勇気を思い出し、暴食爪を発生させた。多世界議員をなぎ払う。

「バカか、貴様ら。多世界連合軍に勝てるとでも思ったのか」

 ジャラテクはリトルリップを起こし、多世界議長をしとめ、指令系統を混乱させた。

 メキはジャラテクの補佐に入る。アーシスは三人の仲間への献身の思いを描き、小さな暴食爪を発生させた。八千億を超える宇宙の精鋭が四人を襲った。砲撃、生物兵器、拘束具が飛んできた。多世界議会を族長カノウと特攻兵アーシスが消滅させた。多世界連合軍はビッグバンを起こし、襲ってくる。暴食爪がビッグバンを食らう。ビッグバンの連打が起こった。宇宙が創世され、消滅していく

 ジャラテクとメキは、兵器として使われるビッグバンから生まれる宇宙から使える道具を採取するのを忘れなかった。

 なかなか死なない四人の反乱軍に対し、多世界連合軍はマルチユニヴァースビッグバンで攻撃した。しかし、二つの暴食爪に守られた四人は生き残っていた。

 この戦いの中で、ジャラテクはずっとメキがビッグバンで死なないように、リトルリップを使い守っていた。

 族長カノウがいった。ジャラテクの攻撃が全力でないのを見て。

「ジャラテク、何をしているんだ。貴様は、ふぬけるな。なぜ、全力を出さない。だから、お前はダメなんだ」

 苦しい戦いの中で、族長カノウの味方への励ましのことばのつもりだった。しかし、それがメキを激怒させた。

「ふざけるな。何をいってるんだ、あなたは。いざというときにわたしたちのために戦ってたのはジャラテクだろう」

 メキは族長カノウを殺した。メキは激情すると、信念を貫く女だった。ジャラテクをバカにするやつは許さない。

 族長カノウは目が点になった。

「どういうことだ。何がいけなかったんだ。何を怒っているんだ」

「お前の偉そうな口の利き方が気にくわないんだよ」

 メキの錯乱を見て、アーシスは思った。やはり、この三人は信用できないと。アーシスはこの時、メキとジャラテクを殺そうと思った。

 特攻兵アーシスの暴食爪がメキを襲った。ジャラテクのリトルリップが暴食爪をはじく。献身を失い、アーシスの暴食爪が消えた。

「逃がすか」

 ジャラテクがアーシスを紐で捕らえた。

「あんたがまだ敵とはね」

 ジャラテクがうなった。

「おれは覚えている。食性宇宙を滅ぼすには、お前たちを倒さなければならないことを」

 アーシスがいった。

「くそう」

「わたしに任せて、ジャラテク」

 メキが前に出て、アーシスにとどめを刺そうとした。アーシスは拘束されたまま、一撃でメキを刺し殺した。

 ジャラテクは絶望した。

「バカな。今まで、おれが守ってやっていたことに気づかなかったのかよ」

 絶望したジャラテクが暴食爪を発生させた。再び、ジャラテクの暴食爪がアーシスを殺す。そのまま、多世界連合軍も滅んだ。

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