第4話

陽が西に傾き始める頃、店を出る。

どうしても行きたい所があるから。

俺はあいつを西口へ引っ張って行く。


高層ビル街。

三井ビルの前の陸橋の上で立ち止まる。

そして、手摺にもたれて、ビルの谷間に陽が沈んで行くのを眺める。

俺はここが好きだ。

ここへ来て夕陽を眺めていると、俺は東京に生きているんだ、という気持ちが胸に込み上げてくるんだ。

俺と同じように、夕陽を見つめていたあいつが、不意に俺の方を振り向き、俺の肩に頭を載せて囁く。


好きよ


ああ、やっぱりこいつも東京に生きているんだ。


やがて中央公園の木々の向こうに、まさに太陽が沈もうとする。

すると、なぜか俺は、いつも涙が目に溢れてくるんだ。

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ビルの狭間より ー 1979年4月 - sirius2014 @sirius2014

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