episode7

――翌朝。


すっかり体調が良くなった緋菜は携帯をパカパカと開きながら、通学路をゆっくり進む。昨晩寝過ぎたせいか、いつもより早く目が覚めてしまい、少し早く出発したので通学路には誰もいない。


「メールはなし、か」


昨日あやめに送ったメールの返信が未だにない。

あやめは意外とメール不精なのか? と悶々と考えを巡らせていると……


数メートル先の電柱付近に、人影があった。

緋菜は思わず肩を震わせ足を止め、灰色の目を見開く。


(もしかして……またあの黒い影?)


顔から血の気が引く様がわかった。胸がドクンドクンと鳴る。口から心臓が飛び出してきそうなくらい激しく。体が地面と一体化したかのように動かない。動けなかった。

またあんな不可解な生き物と遭遇したら、命などある筈がないと思ったからだ。

すると影がピクリと反応し、ゆっくり動き出す。その瞬間、緋菜の鼓動も更に大きく鳴った。


「やぁ、こんにちわ。あ、今はおはようの時間かな?」

「ひゃああああああああ! ……ん?」


つい最近聞いた覚えのある声が、耳に入ってきた。きょとんとした顔でその声がした方へ目線をうつす。


「あ、あぁぁぁ!」


すると電柱の影から出てきたのは、昨日桜の樹で出会ったあの不思議な雰囲気の少年であった。

拍子抜けしたのか、思わず指を差しながら大声を出す緋菜に、彼は苦笑いをしていた。


「朝からそんな大声出したら、怒られちゃうよ?」


ごもっともな指摘により、緋菜は大きく開いた口を焦りながら閉ざす。

そして再度少年に視線を戻した。

その視線に気づいた少年は、ニコッと爽やかな笑顔を一つ緋菜に送る。


「そういえば自己紹介がまだだったね。僕はマドラ」


少年――マドラは、深い蒼色の詰襟を着ていた。下半身も上と同じ色のズボンを履いており、黒いブーツを履いていた。

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色彩の創術士《ソーサルティア》 小鳥遊空生 @imi_A_aaa

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