異世界交遊録
辻憂(つじうい)
第0話 ゲート
小さな公園ほどの広さのあるストーンサークルの周辺には直径10cmほどの青い蛍光色の球体が、いくつもホワホワと浮かんでいた。人々は、これを「ワープゾーン」だとか「ゲート」であるとか思い思いの名で呼んでいる。正式名称を並行空間移転装置という。偉い人がそう決めたが、その呼称を守る人はそう多くない。
この装置を利用すると無限に存在していると科学と魔術の進歩で確認されたパラレルワールドに瞬時に移動できる。当然、行った先から戻るときにはストーンサークルの配置によって空間移転用の設定をしなければならないから、並行世界の住民もこちらへ来れる。我々にこの技術がもたらされたのも別世界の存在からだと思われる。しかし、いったいどこの世界の住民が開発したものであるのか、自分たちがいったい何番目にこのゲートを引き受けることになったのか、そういったことはまだ分かっていない。ただ使い方と別の世界に行けること、そして別の世界から奇妙な存在が訪れること、そして交易によって食糧や資源など様々な問題は解決してしまって、その代わりにあわただしく変化の対応に追われる人々が増えたことは確かである。
異世界へ旅行と偵察と交渉に行く人々は元の世界の事務仕事を嫌悪していることが多い。反対に現世界へ残る人々は異なる世界に疑心や小さな恐怖心を抱いていて、それらの負の感情に素直でいて退屈を好んでいる。退屈に耐えられない存在にとってこの「ゲート」の存在は救いであった。今日もまた多くの人々が異世界に旅立ち、また多くの異形の存在がこの世界をおとずれる。
異世界交遊録 辻憂(つじうい) @tujiui
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