笑わせてもらった。
作者さんは「哲学入門として書いた」とおっしゃるが、わたしからすると、これは哲学でよく出てくる単語にすでにさらっと触れたことのある人がちょっとした暇に楽しむ作品ではないか、と思う。
散りばめられた固有名詞(小道具)では哲学・文学などの人文系を、キャラクタと舞台設定とプロットではライトノベルを、いずれもパロディ化して使っている。つまりは「感動」「発見」に向けられた作品というよりは、「おれらほんとこういうの好きよなー」的笑いに向けられているというか。そういうものとして十分成立している。
たとえば大学の文学部で二ヶ月後に卒論を出さなくてはいけなくて、でもアリストテレスにおけるミュトスの意義とかスピノザにおけるわけわからん神即自然とか身体改造ロボット時代における存在論的転回とか、もークソクソクソど・う・で・も・いいんだよ! とりあえず今すぐ同じゼミの愛しの佐藤くん(山田さん)と学生ランキング爆発中の駅前のつけそば屋に行きたい! でも佐藤くん(山田さん)にいいとこ見せなきゃなあ、あと、うん、まあ、一応、哲学好きだからこのゼミ選んだんだよなあ、
みたいなジレンマを行ったり来たりしている人が、ゼミ報告前日の深夜の3時にこれを読んで笑ってそして「無」になる。
そんな読まれ方。
ただ出てくるネタは、ちょっと古めで、2000年代の懐古といったところか。だから現役文系大学生にはわかりにくいかも。昔に執筆なさった作品ということで仕方がないのだろう。
ヘーゲルとヴィトゲンシュタインが初見殺しなのはホントそう。でもカントは論旨が明晰で読みやすいと思うけどな、とちょっと思いましたが。
難点は長いこと。前半1/3くらいまでは楽しく読んだが、あとは疲れてしまった。このコンセプトの作品であれば、1〜2万字でよかったのではないか(求められていない暴言、本当にすみません)。