「喪失」

霜月六花

切られ、失い、幸せといわれる。


人々は首を切って楽しんでいる

腰から切られるものもある

斜めに、切り目を入れられる

そして時々その切り目を燃やす。

焦げるまで。


少しずつ元気が無くなって行く様を

見つめながらこう言う。

かわいそう。

そして、どうにかして寿命を伸ばそうとする

失せてしまった時にこう言う。

次はどれにしようか。


楽しみは時に残虐であり、

悲しみは時に同情にすぎない。


これからも人々は切って行くのだ。

そのままが美しいというのに。

どうしても美しさを取り合わせたいから、

どうしても美しさを共有したいから。


殺しているのだと知っても、

好きだからと言って繰り返す。

どう思うのかと問うても、

たしかにかわいそう。

言うだけで心はこもっていない。

こもっているつもりなのかもしれない。

そして、時に人々はこう言う。

でも、楽しんでもらっているから幸せでしょう。


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「喪失」 霜月六花 @rikkainthesky

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