第7話 エルフさん、どうして肌が黒いんですか?

アレク君(8才)は、最近はだんだんとめげてきました。

何だかエルフさんの年齢を、見た目から探るのがとても難しいと感じ始めたからです。


この間のはい・えるふさんは耳が長かったなあ。

あのくらい、わかりやすく見た目の違うエルフさんはいないかなあ。


そんなことを考えながら、下を向いて、てくてく、と歩いていたら正面から歩いてきた大人の人にぶつかってしまいました。


「あっ!ごめんなさい!大丈夫でしたか?」


アレク君は、礼儀のしっかりした子なので、悪いことをしたら謝ることができるのです。

そうして相手の女の人を見て、アレク君はとても驚きました。


腰まである銀の髪。大きな胸。そして何よりも、黒い肌!

こんな見た目をしたエルフさんをアレク君は見たことがありませんでした。


アレク君は、夢中になってお願いしました。

「エルフさん!あの、お名前を教えてください!」


すると歩み去ろうとしていたエルフさんは「あら」と言いながら、立ち止まって振り返りました。

「あたしは、エルフじゃないわよ、ダークエルフなの。間違えないようになさい。そうね、特別に教えてあげる。あたしはピロてー・・・。」


アレク君はエルフ語で名乗られた名前を最後まで聞き取ることができませんでした。

それよりも、はるかに大事な情報に心が夢中になってしまったからです。


ダークエルフ!話に聞いたことはありましたが、実際に目の前にするのは初めてです。なんと見事な黒い肌でしょうか。

アレク君はすっかり見惚れてしまいました。


その時、アレク君の小さな頭には「ハッ」と閃きが走りました。

それはお母さんと美容師さんが話していた内容を思い出したからでした。


お母さんは「夏になると日焼けするのがいやね、若いときは肌を小麦色に焼いたものだけど、この年になるとシミになってしまうものね」と美容師さんに愚痴を言っていたのです。


なるほど、色の黒いダークエルフさんは、若いから肌を黒く焼いてるんだ!

これは重要な情報だぞ!


アレク君はすっかり満足して、ピロテー・・・さんに弾んだ声で話しかけました。

「ピロテーお姉さん、とってもお若いんですね!」


ピロテー・・・さんも若い女性ですから、そう言われて嬉しくないはずがありません。

「あら、人間の子は小さいのにお世辞がうまいのね。でも、そういうことは人間に言ってあげなさい」


ピロテー・・・さんは人間の男性が好きだったので、アレク君の感想が、少しだけ嬉しかったのです。


アレク君はピロテー・・・さんにお礼を言うと、意気揚々と、お家に帰っていくのでした。


今度、耳の長いハイエルフさんに会うことがあれば、ピロテー・・・さんのことを教えてあげよう、と小さな胸で思いながら・・・

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

エルフさん、あなたは何才ですか? ダイスケ @boukenshaparty1

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ