第6話 エルフさん、耳を触ってもいいですか?
アレク君(8才)は悩んでいました。
アレク君は、どうしてもエルフさんの年齢を知りたいのです。
でも、なかなか新しい方法を思いつきません。
何か、変わった特徴を持ったエルフさんはいないかなあ。
そうすれば、そのエルフさんを基準にして比較すれば、何か見えるかもしれない。
アレク君は、悩みながら道を歩いていました。
すると、道の向こうから綺麗な女性のエルフさんが歩いてきました。
アレク君の目は、そのエルフさんに釘付けになりました。
そのエルフさんは、実に長い耳を持っていたのです。
これまで、アレク君が見たことのない特徴です。
これはチャンスです!慎重に、相手を怒らせないように話を進めないといけません。
「こんにちは!キレイなエルフさん!」
アレク君は、元気よく挨拶をしました。
綺麗な女性のエルフさんは、元気の良い挨拶をしたアレク君が気に入ってくれたようです。
「あら、人間なのに礼儀正しいのね。でもね、あたしはエルフじゃないの。ハイ・エルフ。そこらのエルフとは違うのよ?」
ハイ・エルフ!初めて出会うエルフさんです。でも、返答はちょっとだけ皮肉っぽいです。口の悪いハイ・エルフさんなのかもしれません。
アレク君は気にしません。元気よく名乗ります。
「うん!僕の名前はアレクっていうんです!キレイなお姉さんの名前はなんていうんですか?」
「あら?あたしの名前はディードリ・・。ハイ・エルフよ」
アレク君はハイエルフの言葉が少し苦手だったので、語尾がよく聞き取れませんでした。
それでも、元気よく、礼儀正しく話しかけました。
ハイ・エルフさんと会って質問できる機会など、もう二度とないかもしれないからです。
「ディードお姉さん!ハイ・エルフさんは、エルフさんより長生きなんですか?」
ディードリ・・・さんは迷いました。彼女は種族の中では若手で、森の仲間たちの停滞した生活を嫌って街へ出てきていたのです。それでも、自分達ハイ・エルフが普通のエルフより劣っているところがある、などと認めるわけにはいきません。
ちょっと大人げないかな、と思いつつ胸を張って答えました。
「あたりまえよ!ハイ・エルフはエルフより、ずっとずっと長生きするのよ!」
アレク君は「ハッ」としたました。
アレク君のアプローチに、初めて科学の光が差した瞬間でした。
「エルフは年をとると耳がのびるんだ!」
アレク君は、自分のことをてんさいだと思いました。
あとは、事例を集めて検証するだけです。
アレク君はディードリ・・・さんに何度もお礼を言って別れました。
ディードリ・・・さんは、アレク君がお礼を言いながら何度も指で耳を測るしぐさをしていたので奇妙に思いましたが、人間が奇妙なのはいつものことなので、特に気にしませんでした。
実は、アレク君は、非常に特殊な、東洋の島国で生まれたハイエルフさんを見て、全体を推定する、という誤りを犯してしまったのですが、そのことに気がつくのは80人程の普通のエルフさんの耳を測り終えた後のことでした。
外見からエルフさんの年齢を推定したい!というアレク君の努力が実を結ぶまでには、まだまだ困難な道のりが待ち受けているのです。
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