眠らぬ中京

作者 九紫かえで

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16人が評価しました

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★★ Very Good!!

本作を読んだ後に、近況ノートを御覧ください。2度、楽しめます。
私は初めて九紫さんの作品を読んだ者です。作者の分類通り、◯◯路線を想像しましたが、何か釈然としない。過去のレビュー文を読んでいて、七瀬さんのコメントに気付き、納得した次第です。
そこまで考えた作品だとは予見しませんでした。
星の数は、短編にはMAX2つが信条だからです。

★★★ Excellent!!!

読みやすい。短編だと非常にプラスになるポイントですが、会話と地の文のバランスが良いように思えます。スッと読めて情景も入ってくる文章はさすが。
名古屋に住んでいない人が読むと、より楽しめる作品でしょう。国内ではありますが、見知らぬ地でのドラマというのがエキゾティシズムを感じさせて独特の雰囲気を出しています。
長くはない文量でしっかりまとまっているのがお見事でした。

★★★ Excellent!!!

中京――名古屋を舞台にして語られる一夜の恋物語。

あと一歩踏み込まないことで関係を維持する大人の付き合い。

曖昧で甘い男女の関係が女性の一人称で描かれ、はっきりとしない男性の優柔不断さに――まぁ、こんな関係ってよくあるよなと思わされてしまう。

しかし、この物語を読んだ読者には、ぜひ作者の近況ページに書かれた「種あかし編」を見てもらいたい。

おそらく、この物語を読んで抱いていたであろう感想や予想とはまた別の――新しい視点を得ることができると思う。

もやもやしたければ、ぜひ一読することをおすすめする。

短い話しの中に、深みや奥行きのある物語を描いて見せた作者の思惑にハマってみるのも一興ではないだろうか?

★★★ Excellent!!!

「私にとっては怠惰な日常であるこの街も、彼にとってはまだ刺激的な非日常なのだろうか。」の一文を読んで一華さんの「覚悟」が分かったような気がしました。一華さんの思いが届く日は来るんでしょうか…… とはいえ、カオル君の最後の台詞も分かるような気がするんです。
二人ともにある接近したい気持ちと近づけない思いが、名古屋という空間を舞台に、短い場面の中で印象的に描かれた作品だと思いました。

Good!

 テンポ良く場面を切り替えながら、噛み合っているようですれ違う大人の男女の恋愛模様を描く。軽快なという意味でのライトタッチが読んでいて心地良い。裏面を覗けば残酷とすら言える恋の形が、このライトさでするすると心に滑り落ちてくる。
 暗い夜を飾る「色」の存在が、二人の間の感情を代弁しているかのようでスリリングだ。


 もう少し彼らの“中身”を覗いてみたいと思うのは、贅沢な望みであろうか。

★★★ Excellent!!!

短いながらも主人公の女性の複雑な感情の描写が凝縮されている小説。必要最小限で女性の感情をうまく表現させていると思います。そして雨やバーの店内などの情景が物語に奥行きを持たせており、二人の空間とその間にくすぶるような大人の愛を彩っています。少ない言葉で頭の中に情景を想起させる技術は素晴らしいと思います。
個人的には、出身地である名古屋の地名が随所に登場するので嬉しかったです。

★★★ Excellent!!!

この物語は報われないと決めた恋をする女性のお話。
男の人には無い強さを持っていて、男の人には無い弱さを持っている。女の人のそんな内面を、喜びと哀しみで見事に表現されていました。
『遠い将来の不安で、目の前の幸せをやすやす見逃すような女じゃない。』
特にこの言葉には彼女の覚悟が詰まっていて、やるせなさや切なさを強く感じました。
とても素敵な小説です。