第6話悲しき願い(前編)

私の名前はルカ。

南にある小さなスル村に住んでいる。

人口200人弱のこの村は農業中心の生活で、家族みんなで農作業をしていた。

みんなが笑顔で暮らしていた。

しかし、平和だったこの村に突然悲劇が訪れる。

そう、盗賊団の襲来である。


「男とガキと年寄り共は皆殺しにしろ!!!」

「いい女がいたらお前らの好きにしろ!!」

「食料、酒はありったけ奪え!」

「逆らう奴等は皆殺しだ!!」

小さな村であるスル村には戦える者など殆どおらず、農具を持って応戦するも戦い慣れた盗賊団に対応できるはずもなく犠牲者が増えるだけであった・・・

村のあちこちで上がる火の手・・・

阿鼻叫喚の地獄絵図がそこにあった・・・


「どうかお待ちください。貢物を差し出しますから村の者たちの命ばかりは!」

村長が必死の思いで交渉を試みるが・・・

「うるせぇ!黙って死ねぇ!!」

問答無用で切り捨てられる・・・

逃げ惑う村人を後ろから前から切り捨てる盗賊たち・・・

「娘は渡さんぞ!」

「馬鹿が!囲め囲め!」

「おらぁ!てめぇも死んどけ!」

「いやぁぁぁぁ・・・お父さん・・・・いやぁぁぁぁっ・・・」

家族を守ろうと必死に戦う男も数人で取り囲み、槍で串刺しに・・・

命乞いなど許されるはずも無く、村人たちは次々にその命を散らしていった・・・

あちこちで広がっていく血だまり・・・

まるで池のよう・・・


私は村が赤く染まっていく光景を呆然と見つめることしか出来なかった・・・

あの人たちは何でこんな酷いことが出来るの?

私たちが何をしたの?

ただ、村のみんなと暮らしていただけなのに・・・

何でこんなことになるの?


「おっ!ガキ発見!お前もついでに死んどけ!!」

盗賊の剣が私に振り下ろされる・・・

死を覚悟する私・・・

そんな私と剣の間に立ち塞がったのは、私のかあさんでした・・・

「ルカ・・・あ・・なた・・だけで・・も・・にげ・・」

「いやぁぁぁっ!!!!!!」

「ちぃっ!ババアが邪魔しやがって!!どけよ!!ガキが殺せねぇだろうが!!!」

何度も何度もかあさんに剣を振り下ろす盗賊・・・

しかし、かあさんは私の前に立ち塞がり続けた・・・

まるで壁のように・・・


「そんなの放っておけ!早く次の獲物に行くぞ!」

「ちぃっ!まあいい!運があったなガキ!」

私を無視し、別の場所に向かう盗賊たち・・・

その姿を見て安心したのか、崩れるように倒れるかあさん・・・

「かあさん・・・うそだよね・・・かあさん・・・」

かあさんの肩を揺する・・・

しかし、二度と目を開けることは無かった・・・


「お前ら!村に火を放て!!!」

「「「おおぅぅっ!!!!」」」

次々と村の家々に突き刺さる火矢。

村は炎に包まれていった・・・

炎を避けながら村を彷徨う私・・・

何処かに生き残っている人はいない?

お願い!私を一人にしないで!!


しかし、私の儚き願いは届かなかった・・・

この村で生きているのは私だけであった・・・

気がつくと、村の中心にある祈りの祠の前に来ていた・・・

私は祠の前に跪き、そっと祈りを捧げた・・・

「神様・・・どうか願いをお聞き届けください・・・」

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適職は女神!? ねこぱんちw @nekomata123

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