無上の美の体現者がその他有象無象を篭絡し捕縛していく様が優美な文で記述されており、美が全てを支配する空間に読者を引き込んで行くように感じられます。新作の美少年小説も待っています。
流麗な文章で語られる、倒錯と淫蕩に彩られた世界。その在り方は多くの人から見れば屈折しているが、それでもなお否定しがたいほどに美しい。いや、屈折しているからこそ美しいのである。
耽美で幻想的でありながらも、読みにくいというほどゴテゴテとはしておらず、スッキリとしていて清潔で綺麗な、雰囲気のあるライトな文体。この絶妙なバランス感覚故に、描写されているのは粘性のある場面なのに、不思議とサラリと気持ちよく脳に入ってきてしまう。その感覚が、各掌編に共通する「意志とは裏腹に溺れていく」といったテーマに繋がっていて、脳の裏側をくすぐられるような奇妙な感覚を味わうことができる。