第4話

薩美凌たちが校舎を吹き飛ばすおよそ1時間前……

(ガサガサッ)

古い棚の中から白い紙を取り出す一人の若者がいた。

「彼らは今までの者達とは違うな。これが効いてくれるといいんだが……」

おもむろに立ち上がり、帯をきつく締める。体全体を覆う黒い着物は彼の姿をより一層近寄りがたい者へと変えていく。

「さて、仕事を始めようか」



「はぁはぁはぁ……」

恐らく奴らは振り切ったと思う。みんな校門から四方へと散ったから全員は捕まらなかっただろう。

「で、どうしようか?」

バカか俺は。何もこれからのことを考えずにここまで来てしまった。

(とりあえず、集合場所の第一公園に行く前に家に寄るか。食料とか水とかも必要だからな)

第一公園ってのは、学校から600メートル位離れたところにある大きな公園だ。大きいといっても、遊具はブランコや滑り台、鉄棒といった物が1割を、残りの9割には森が広がっている。直感的にあそこなら見つかりにくいだろうという事で叫んでしまった。

家への帰路に入るとおかしな事にようやく気付いた。気づくのが遅過ぎだ。おそらく何も学校からここまで何も無かったから気づかなかったんだろう。その事自体が不自然である事を……

(人がいない⁉︎)

そう、辺りを見回しても人の居る気配がしない。もう太陽は沈みかけているというのに、どの家も明かりがついていないのだ。俺の家までの帰り道には商店街がありいつもはまだやっている時間であろうに、どの店もシャッターが下りている。

(全員奴らに殺されたのか⁉︎)

最悪の事態になっているかもしれない事に、改めて気づかされた。うちの学校だけでなく他の所にも侵略しているかもしれないのか。

そんな事を思っているうちに、家に着いた。うちも電気がついていない。だがまだ安心していられるのは、母親は朝から友達の家へ出かけているからついていないのが当たり前でらあるからだ。

明かりを点けずに家に入ってまず台所に向かう。幸いな事にペットボトルの天然水が二本あった。どちらも1リットルだから持ち運ぶときは重くなるが、どのくらい水が確保できるか分からないから持っていくべきだ。

(ガラガラッ)

次いで手に取ったのが長めに持ちそうなカンパンや缶詰めだ。こんなのは、すぐに尽きるだろうがないよりはいいだろう。

そして二階に上がり服を着替える。動きやすい、かつ夜の寒さに耐えれるような林間学校のために買ったズボンとウエアー。そして夜道でも歩けるよう懐中電灯を、先ほどの食料が全て入るような大きさのリュックサックを持つ。これはアニメとかのグッズを大量に入れられるように選んだバックだから、普通は一杯にならないはずだ。食料を詰めた後、俺はとりあえず簡単な武器を持った。一つは台所にあった果物ナイフ、もう一つはお祭りのときにゲットしたモデルガン。

(こんな装備で戦えるのか?)

少しでも命を長らえる事は出来るだろうと信じて玄関に戻る。

リビングで

「しばらく帰ってこれない」

という手紙を残した。もし両親のどちらかが帰ってきてこれを見れば……と思う。奴らがいなくなるまでの間何としても生き残るんだ。

「よし行くぞ」



ここからだと公園まで普通に歩いて20分ぐらいだろう。何も起こらなければだが……。

外では明かりは街灯だけでやはり家の中に明かりは灯ってない。右手にモデルガン、左手に懐中電灯を持ってゲームであったように手を交差させつつ早足で、かつ周囲に注意を払いながら足を進める。

ゲームでは敵の足音を聞いたりして倒していたが、実際はどうなんだろうか?普段なら出来ないだろうが、雑音がない今ならいける気がする、なんとなくだが……。

今持っているハンドガンだがこれは三点バーストといわれる銃だ。一回引き金を引くと3発の弾丸が出る。これならそんじょそこらのモデルガンより強いはずだ。

ゲーム上でも同じ武器をよく使っていた。というか、この武器で世界2位を獲得したんだったか。その記録をとったときは嬉しかった反面、1位との差が大きかったことに落ち込んだりもした。順位はスコアや敵をキルした数で変動するのだが、自分の2倍のキルを取られてて完敗という結果だったのだ。1位の人にもいづれ会ってみたいな。

「ガシャッッ」

急にそんな音がした。俺の足音じゃない。だとしたら……

(サッ‼︎)

とりあえず姿勢を低くする。すると、

(スパッ‼︎)

自分が立っていた所を何かが通り抜け、自分がっているのと反対の左側の塀に穴を開けているのが見えた。

(あ、危ねぇ、しゃがんでなかったら一発KOだったぞ)

とりあえず、今撃たれたのは穴の空いた塀から見て右側からだ。モデルガンを持つ手に汗を感じる。

(逃げてもおそらく捕まる)

そう思い角から顔をそっと出し様子を伺う。

数は1体。

(行くぞ!)

角からモデルガンを出し、相手に向けて引き金を引く。

「うぁぁぁぁ‼︎」

(ダダダッ、ダダダッ、ダダダッ)

相手の頭、左胸、胴と当てていく。しかし、ビクともしない。

(ガチャッ)

相手の手には銃のようなものがついている。(あれが人を撃っていたのか)

と納得する前に、それを向けてきたことで恐怖が走る。

(し、死ぬっ‼︎)

そう思った時顔の横を白い何かが通り抜けた。

(っ⁉︎)

紙か何かか?と、思う間もなく目の前で爆発が起こる。

「ふー、効いたかな、良かった良かった」

振り返るとそこには、黒い着物を着た、そう神社とかにいる神主さんの格好を黒くしたような着物を着た男がいた。まだ年はとっていなそうだ。むしろ、同じくらいに見える。

「君、大丈夫?」

「あぁ、助けてくれてありがとう。君は……」

今知りたいのは、こいつが誰でどうやって爆発をおこしたのか、さっきの紙みたいなものはなんなのかと言うことだ。何もない所に爆発なんて起こせるわけないのに……


「俺は龍神響、日本最後の陰陽師だ」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ラストヒーローズ @yamasy

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ