第3話
「水素を使うのはいいけど、どうやって校舎中にまくんだ?」
金作が聞いてくる。
「確かこの校舎には空気が通る配管があったよな。あの中に水素を入れれば校舎中に広がるはずだ。」
「了解。じゃあ使うものを集めようぜ」
「見張りもいた方がいいんじゃないかい?」
「そうだな、茂部一のいう通り見張りがいた方がいい。だったら凌と綾月さんで水素を、俺と茂部一は見張り兼奴らがどのくらいいるのか偵察する、という割り振りでどうだ?」
金作、お前めっちゃ仕切るのうまいな。アイドルのことさえ言わなきゃ、クラスでリーダーになってただろうよ。
「ちょっと待ってくれ、奴らに殺されるかもしれないから偵察は止めようよ。僕も水素の生成を手伝うよ」
こいつ行かない気か?
「茂部一、奴らがどの辺りにどれぐらい居るかは、この脱出に必要な情報だよ。だから頼む」
「だったら君が行けばいいじゃないか。人にやな事を押し付けるなよ。」
なんだこいつ、根は最低だったんだな。今は一刻を争う時なのに……
「分かったよ、俺が君の代わりに行くよ、ついでに放送室にいってくるよ」
戻ってまた放送室に行くのは2度手間だからな。
「凌がそれで良いならそうしよう」
「そうそ決まればすぐ始めよう」
「なぁ凌、ちょっと愚痴っていいか?」
「どーぞ」
「茂部一の野郎さ、今はどういう時か分かっていやがんのかなぁ。みんな死ぬかもしれない中生きのびようとしているのに、自分は危ないところには行かないってよ〜」
「まぁみんな本当はそう思っているさ。あいつだけじゃないよ、俺も思ってる」
「でも凌はそれでも行動を起こしてるじゃないか」
本当だ。今までの生活では、例えば学校行事の体育祭や文化祭ではそんな事なかったのに……
(ドンッ)
急に前を歩く金作が止まったせいで鼻を金作の背骨にぶつけた。
こいつの背骨アホみたいに硬いぞ、まぁ柔らかかったらまっすぐ立てないけどな。
(それより、止まったって事は、奴らがいるのか?)
金作はすでに何かを見ている。
その先を見てみると、奴らがいた。数は三体。
「他も回ろう」
金作に告げ、静かに歩き始める。
「綾月さん、こんな事やめて僕と隠れていようよ」
「それはダメだよ。薩美君と剛力君が命がけでやってるんだから、こっちも準備をしよ。そこの塩酸を取って」
今はこれしか私にできる事はないと思う。そして成功する事を信じなければ、もう精神的に参っちゃいそうだな。あの二人は今頃無事かな?放送が入る前にはできるだけ多くの水素を作っておきたい。
「後どのくらいかかりそうなんだい?」
「んー、校舎吹っ飛ばすくらいの量だと今できている分のあと100倍くらいかな」
「そ、そんな必要なの!」
「う、うん」
そのくらいないと吹っ飛ばすとかできないよ。
放送室までなんとか来れた。ここに来るまでに何体かの奴らに会ったが見つからずにすんだ。
「よし、放送しよう」
(だいたい半分くらい出来たかな?)
さっき準備室で水素が入った容器がダンボールの中に大量にあったから大分楽になった。
その時、
「現在校舎にいる人は校舎から一番遠い校舎に入ってください。残りの校舎を吹き飛ばすので、そしたらすぐに逃げるようお願いします!」
(放送か……)
もう始まるのね。
放送はし終えた。あとは吹き飛ばすだけだ。
「すぐに戻ろう」
金作に伝える。もう終わらせよう。
「どのくらいできたの?」
綾月さんに聞く。
「もう出来たよう」
思ったより早かったな。帰ってきてもまだかと思ったのに。
「よしすぐに配管に流そう」
「もう流してるよ」
(仕事ハヤッ)
「じゃあ、タイマーのセットだね。」
「それは茂部一君に頼んでやってきてもらった」
茂部一め、綾月さんに言われると動くんだな。さっきも綾月さんに行って貰えば良かった。
「なら始めよう」
設定された時間まであと一分か。上手くいってくれよ。失敗したらどうしよう、こっちの校舎も爆発したらどうしようという不安が頭をよぎる。
(あと十秒)
でも信じるんだ。
(ドォォォーーーン)
みんな校門めがけて一気に走り始める。ちゃんと作戦通りいった。金作は先頭を走る。横には他の生徒もいる。
(良かった、他の人たちも居たんだ)
あと100mの所に来た地点でまさかのことが起こった。横から奴らが飛び出てきたのだ。そして共に走る中の一人を捕まえる。
「茂部一⁉︎」
「がぁぁぁ、何でだ、何で俺がこんな目にあうんだょォォォ!」
助けたいが、奴らが追いかけてくるので出来ない。
(くそっ!)
一人失った。だが立ち止まれない、皆走り続ける。
「みんな、もうすぐだ。校門を出たらバラけるぞ!後で第一公園で集合するぞ!」
逃げる人たちにそう叫ぶ。
絶対生き残ってやる‼︎
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