第2話

「え⁉︎」

しまった、今まで女子とこんな近い距離にいたことがなかったからドキドキしてて、全く気づかなかった。こんなことになる前に、少しは女子慣れしとくんだった。全く俺のどアホ!

(スタスタスタッ)

まずい、確実に近づいている。逃げ場はないから、静かにするしかないが、開けられたら一環の終わりだ。

扉に一番近い金作が俺と綾月に口に指を当て静かにするよう指示する。

(スタスタスタスタッ)

どんどん近づいて来る。死んだ場所がこんな狭い棚の中なんて洒落になんないぞ。ここに来てから何回も叫び声を聞いている。何をされるのかわからないが、こんなとこでは死にたくない!

(あれ?)

音が消えた。ホラーゲームだといきなり戸が開いて「ウァァ」見たいことになるから、緊張は緩めない。絶対来るなよ、いいか、絶対だぞ。

「ガラガラッ!」

来た、本当に来たよ、ありがとうみんな、みんなって誰だ?ぼっちなのに……

「や、やぁ」

そこに居たのは茂部一だった。こいつもまだ生きてたのか。初めてこいつと正面から向き合ったな。とりあえずイケメンという奴に軽く会釈する。

「綾月さん、ここにいたんだ。心配したよ」

あ、無視なのね。まぁ、わかっていた事だけど、であるけどやっぱり心に響くわ。

「君たちはどこのクラスの人?」

「へ?」

こいつ今何つった?

「やだなぁ、同じクラスの薩美君と剛力君だよ」

「そうだっけ?」

思わず、金作と顔を見合わせる。

(俺らってそんな風に扱われてたんだ)

そんな風に二人とも落ち込んでいると、茂部一が怪訝な顔をする。

「どうしてここに3人で隠れてる事になったの?」

茂部一が聞いてきた。

そういえばどうしてだっけ?無我夢中で逃げて来て……

(そうだ)

「元々俺と金作で隠れてたんだけど、そこに逃げ遅れていた綾月さんがここの教室に逃げてきたんだよ」

「そうたったんだ……」

(ん?)

なんか表情がへんだ。もしかして妬いてるのか。

(まさかな)

「茂部一君はどうしてここに?」

綾月さんが聞く。

「僕も隠れられそうで、奴らが居ないとこを探してきたらここに着いたんだ。奴ら人間を殺したり、連れ去ったりしているみたいだね」

そう、ここからも逃げ遅れて奴らに捕まった人たちの悲鳴が先ほどまで聞こえていた。

(もう残りは俺らだけって事はないよな)

「あ、あのさそろそろここから逃げたくねぇか?」

金作が口を開く。

「だけど奴らが落ちてきたのは校門側の校舎だからにげられないよ」

そうなのだ、他の塀は高くとても乗り越えられない、棘もついているとか聞いたことあるし。だから校門からしか出られない。全く面倒な構造してるな、まぁこんな事になるとはだれも予想してなかってだろうけど……

「奴ら全員を校門までの道、校門側の校舎とココとをつなぐ校舎を消せば、例えば爆弾なんかを使って校舎を吹っ飛ばすとか出来たら楽なのにな」

(そんなの無理ですよ、金作くん)

いや待てよ。校舎を吹き飛ばせば?

「それなら出来るかもしれないぞ!」



「は?凌、そんなことできるわけないだろ」

「いや、出来る。この間の化学の授業で水素を作った時あっただろ。んでさ、火を近づけるとボンっていくやつ」

「おいまさか、水素爆発で校舎吹っ飛ばすってのか?どんだけの水素が必要だと思ってんだ。第一、火を近づけたらこっちまで巻き込まれるぜ」

「……」

「調理室のコンロのタイマーは?」

(綾月さん!)

まさか、綾月さんに意見を押してもらえるなんて思ってもみなかったから驚いた。

「それならいけるね!」

「……分かったよ、やろう。どうせ実験室に居るんだしな」

「ほ、本気なのかい?だいたいまだ校舎に残っている人がいるかもしれないんだよ。」

そうか、俺らと同じく隠れてる奴らだっているかもしれないのか。

「……放送室に行って知らせよう。」

「誰が行くってんだよ」

そうだ、誰かが行かなくてはならない。

「それは後でもいいんじゃない?まだ準備もできてないんだし」

あぁ、確かに準備してからでいい。だけどいつかは考えなくちゃいけないんだろう。


生き残るためには、他のみんなを助けるためには誰かが行かなくては……

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