第四章 木曜日エピローグ
そして、今日も夜は明ける。日が昇り目に刺さる日の光は俺の眠気を覚まそうとする。
今日は「学校に行きたくない」という気持ちが強く体が重くて言う事を聞いてくれない、
布団の中でもぞもぞしながら、いったい今何時なのか携帯を手に取って確認すると、「6時!まだそんな時間かよ」と思いながら目を覚ました。
起きた時は気付かなかったが携帯にメールが入っていた。よく見るとあかねちゃんからだ
(明日、朝に迎えに行きます。一緒に学校行こうね。)そう書いてあった。
いつからメール入ってたんだろうと着信時間を見ると、12時と表記されていた。
「昨日の夜にメール入ってたんだ!」しかし、俺はこの何気ないメールを見て気付いたことがあった。
「俺、いつあかねちゃんとアドレス交換したっけか?」身に覚えがなかった。
昨日の帰りの一連を思い出そうとしても何も思い出せない、「おかしいな、昨日のどこかでメールアドレス交換したはずなんだけど、身に覚えがない!いつだろう?」
そう思いながらもベッドから起きて、朝の支度をしていた。
すると、携帯が鳴った。
電話越しに「やっほ、迎えに来たよ」とあかねちゃんの声がした。
「あっああ、もうちょっと待ってよ、まだ支度してないからさ!」そう言って電話を切った。
すると家のインターホンが鳴った。玄関から「あら、あかねちゃん?久しぶりねぇ」とウチのお母さんの声がした。
「修介―あかねちゃんよ、部屋に通すから入れてあげて!」と声を荒びてお母さんが俺に伝えてきた。
「おいおい、ちょっとは待ってくれよ!」と思いながらも着替え途中の寝間着をそそくさと脱いで私服に着替えた。
部屋のドアがトントンと鳴る。あかねちゃんだとわかっている俺は「入っていいよ」と声をかけて中に入れてあげた。
「おはよ!ちょっと早く来ちゃった。ゆっくりしていこうね。」とあかねちゃんがマイペースな発言をする。俺は正直自分の部屋に二人きりは嫌だった。
「ごめん、俺ちょっと早めに出る予定だったんだよ、もしいいなら外でのんびりしない?
あと十分くらいしたら家出るからさ」
あかねちゃんにそう言って了解してもらおうと思った。
すると、ちょっと考えた素振りをしてから「うん、いいよ!」と言って満面の笑みを見せてきた。
勘の鋭い俺はすぐわかる。あからさますぎる態度で接してくるからなおさらだ、久しぶりに俺に会ってキュンとでもしたのだろうか、確実に俺に行為を抱いている感じである。
彼女とは中学の時にも同じような事があった。その時も断ったが、今回は一筋縄ではいかないような気がする。
とにかく、今は二人で学校に行くことだけを考えようと思っていた。
「あかねちゃん、ジュース飲む?」と部屋のドアをノックしないで母が入ってきた。
「アッ、ありがとうございます。そんな気を使わなくても、私たちもう少ししたら出ていくので!」とあかねちゃんがあしらってくれた。
「あら、そうなの?いつもより全然早いじゃない・・・まあ、ゆっくり行けばいいじゃない」と何かを勘違いしたかのような目で母が俺を見てきた。
「じゃあ、時間までごゆっくりね」と言って母は出て行った。
あかねちゃんが母の態度で感づいたのかまんざらでもない顔をしている。「違うんだって」と細い声でつぶやくと、少し聞こえてたかのようにあかねちゃんが「え?」と返事をした。
「いやっなんでもない!もうそろそろ時間だから家、出ようか!」
と、その雰囲気を紛らわすかのように俺はあかねちゃんを誘導した。
本当は、普通に登校するつもりだったのに、朝から番狂わせが多くて何もかもうまくいかない、こんなことならあのままふて寝していれば良かったとちょっとだけ後悔していた。
いつもの登校時間が8時半だが、今日はそんな事件があって結果的に30分早い形での登校、普通なら電車に乗ってしばらく歩いての時間が登校時間、50分って所だろうか、それが30分も早いんだから、どう暇を潰そうかという事になる。
いつものように東武東上線から電車に乗って志木駅まで向かう、そこから歩いて大学に行くのだが、今はまさに大学に向かって歩いている最中、もう学校は目前と言っていいだろう、いくらゆっくり歩いても10分ほどしか時間をかけることは出来ない、今はあまり話す話題もない、あかねちゃんに対する核心のもてない事実が俺の中にある以上、下手に口を開けばその質問をしかねない、だから必要最低限の会話以外はずっと黙っていた。
「ねえ、家出てからあまりしゃべらないけど、もしかしてちょっと怒ってる?」とあかねちゃんが声をかけてくれたが、俺は別にそんなつもりではないと思いながらも「ああいや、怒ってないよ!ごめんねそう見えるような事しちゃったかな」とちょっと棒読み風に答えてしまった。
あかねちゃんは、何か深い所に気付いたかのような顔をして、「本当に?」と聞き返してくるが、俺は下手なことは言わないようにと意識をしていた。
「とにかくさ、学校近いけどどうする?一時限の時間まで20分くらい時間できるけど、
学校内で暇潰す?」と、言いながら歩いていると高須が学校に入っていくのが見えた。
「あれ、高須早いな」と思いながら「ごめん、走ろう」とあかねちゃんに促す。
「ちょっと待って、何よ急に!」と叫びながらあかねちゃんが俺の後をついてくる。
高須に近づいてくると何か様子が変な気がした。
どうしたんだろうと正面まで走ってちょっと先で振り返ると、高須が呆然とした顔でトボトボと歩いていた。
高須に何か尋常ではないものを感じた。
「おい、高須!おはよう」と普通に挨拶をすると、一瞬で顔が普通に戻り「おっ、おはよう」と何もないような表情で俺に返事を返してきた。
「なんだ、お前いつの間に俺の近くに居たんだよ」と高須がちょっと驚いたような顔で俺に声をかけてきた。
「そりゃあ、さっきだよ」と何気ない会話をしていると、高須の手に鉛筆が握られている事に気付いた。それを見た瞬間に(これは何かある)と俺は感じた。
そんな時だった。「あかねちゃんおはよう」と声をかけてきた人物が来た。
「匠君おはよう」とあかねちゃんがそれに返答する。
いきなりこの空間に入ってきたのは、あかねちゃんと同じ学科に居る前園匠という人物である。
人間心理学科の中でも異常に暗い人物で、ほかの生徒からは“マッドマン”とあだ名をつけられている。
コミュニケーション障害まではいかないが極度な人見知りらしく、あまり知らない顔とは話せない性格らしい、しかも、外見もまたひどく、目が隠れるくらいの長い前髪を下していて猫背でセンスの無い服を着ているものだから、彼にはあまり人が寄ってこないという極め付け、それなのに人間心理学科に入れたというのも気持ち悪い話なわけで、だからこそ皆に“マッドマン”と言われている。
だが本人はそれが良いらしく、あだ名がついたおかげで前よりは明るくなったと話しているのだ、もうそこまでいくと何が何だかわけがわからない感じになってくる。
そんな匠君がまさかの登場でびっくりしたのもあるが、まさかあかねちゃんに話しかけてくるとは思わなかった。
「どうしたの、変な顔して僕の事見てるけど?」
と匠君が返してくる。
「いやっなんか珍しいなって、あまり、君とは話さないし、まさかあかねちゃんと話すなんて尚更さ!」と正直に答えると「君は面白いね。だから好きなんだよ僕は」とちょっと気色悪いセリフをはいてきた。
そんな会話をしていると時間がアッというまに過ぎていたらしく、学校に付いてもう20分も立っていた。それくらいの時間になると、ほかの生徒たちも続々と登校してくるわけだが、そうこうしていると、正門で話し込んでいた俺に気付いた正蔵君が声をかけて近寄ってきた。
「高須先輩に香山先輩おはようございます。珍しいですね正門で会うなんて」とちょっとテンション高めな声になっている。
すると後ろから、一平さんと恭介先輩がバッタリ会ってこちらに向かっていた。
そして、その後ろからはちょっと駆け足気味で拓氏先輩までやってくる。こんな偶然ってあるのかな、と思いつつもその三人に「おはようございます先輩」と声をかける。
すると、三人がいっぺんにこっちを振り向いて「おお、おはよう」と声をかけながら手を上げてきた。
三人同じポーズを取りながらこっちに近づいてくると、一平さんが「なんかサークル以外でこのメンバー揃うのって珍しいな」と言ってきた。
「そうですね」と正蔵君が話に乗ってくると、「ところで君は誰?」と恭介先輩が匠君に声をかけてきた。
「どうも、初めまして僕、前園匠と言います、あかねちゃんと同じ学科で同じ学年です。恭介先輩の事は知ってますよ、面白い性格してるんですよね。僕そういう人すきだなぁ」とまた、俺に対していったような気持ち悪い発言をしてきた。
「ああ、そうなんだよろしく」と恭介先輩はちょっと苦笑いしながら返答する。
「僕、知ってますよ、人間心理学科で一番頭いいんですよね。僕たちの学年では結構有名なんですよ、ていうか、噂とちょっと雰囲気違いますね。“マッドマン”のあだ名は知ってますけどそんなにひどい外見でしたっけ」と正蔵君がなれなれしく話をしてくる。
「ああーマッドマンね!俺も知ってるわ」と一平さんが言うと、ほかの二人もそのあだ名に反応して「知ってる」というような顔をしてきた。
「そうか、噂とかいろいろ混じっているみたいですね。僕、あまり皆の前に顔出さないからなおさらなのかな?」と話す、俺は正直そんな匠君の姿を見て変な違和感があった。
「匠君ってこんなに喋れてたっけ?」と思ったのだ、俺は入学当初あかねちゃんと話していた時に匠君に会ったことがある。その時も今のような格好をしていて、基本的に黙っている人というイメージがあったのだが、今はその当時を感じさせないくらいちゃんと喋っている。
しかも声色もちょっと高くなっていて雰囲気が全然違う、「本当に本人か?」と思えるようなほどである。
「匠君、一年前と全然変わったね。」と俺が言うと匠君がちょっと不思議な顔をして「え!変わった?何が?僕は昔からこういう性格だよアハハ」と高笑いしながら前髪をかき分けた。
みんな不思議な表情をして匠君を見つめていた。
「あのさあ、匠君!私ね。」とあかねちゃんが声をかけると、ものすごい形相で匠君があかねちゃんを睨んできた。
「お前さ、その性格何とかしないと本当にばれるからしっかりしてくれないかな」
と、俺たちにはわからないことを話し始めた。
「いやっ、あのさ、私確かに昨日皆と一緒にいたし、確かに面白かったんだけど」あかねちゃんがちょっとびくびくしながら匠君に話している。
「大概にしとけよマジで、まあいいけど丁度いい機会だから俺から公開してやるけどね」
と匠君が声を荒びて言ってくる。もうすでに匠君のキャラが変わっていた。
それを聞いて俺は、今まで感じていたもやもやすべてが一瞬で晴れた。そして、高須が気が抜けたように歩いていたわけも、すべてに合点がいったのだ。
「なるほどね。やっともやもやが取れたよ、ずっと違和感だったけど俺の予想は当たってたんだね。」核心がもてた俺は自信満々に匠君に声をかけた。
「すべてが、君の仕業だったんでしょ、俺たちにけしかけたのも、この鉛筆を作ったのも」
そんな俺の行動に皆びっくりしていた。セリフが理解出来なくてポカーンとしている。
ただ、その中で一人だけ理解してくれた人がいた。正蔵君だった。
「やっぱり、そうだったんだ!匠君がけしかけてた事は知らなかったけど、鉛筆に関しては人為的なモノで作ったもので不思議な力は宿ってないってことは分かってたんだよ!
この鉛筆って使うと皆そういう行動しちゃうけどそれって、人間心理的なモノに作用してて、命令を書いた本人がその相手を無意識に誘導しているんだよね。だから、ああいう事ができるんだよ、この意味が分かった時にああ、誰かの策略なのかなあ?みたいな気持ちはあったんだ」
そんな正蔵君の意見を聞いた匠君が拍手をしながら僕たちをほめてきた。
「いやいや、すごいね二人ともそこまで分析できるなんて思ってもいなかったよ」
この俺達のやり取りを聞いていた他のメンバーがやっと理解しだした。そんな中で高須が状況を理解できずに混乱し始めていた。
「えっなに?意味が分からない、なに、ナニ」と声を上げながら、あからさまにアタフタと動き始めた。人は混乱すると本当にこうなるのか!と俺は関心しながらもその高須を見て思い出したことを匠君に問いただしてみた。
「実は、さっき高須が無意識の表情で呆然と歩いていたんだけど、これって実は鉛筆の効果なんじゃないかって思ってたんだ!高須は昨日の時点でかなり鉛筆に依存しているのがわかっていた。俺達と会った時に鉛筆で遊ぶけどそれ以外は鉛筆を使ってないんだ!ってことは、鉛筆を使いたい高須は無意識のうちに鉛筆で自分に命令を書いて、自分でその行動をすることによって一種の快楽を得ていたんじゃないかって!だからこの鉛筆は危険だと思うんだ、とらえようによっては使い方次第で犯罪だって出来かねない代物だよ?
高須みたいに異常なまでに依存してしまう人間だっているんだそんなものを作った時点で危険なんだよ」
そう言う修介の傍らで高須はまだ理解できずに混乱し続けていた。
鉛筆に依存されすぎているのが影響しているのかもしれない、高須には今までには見られない行動なのだから。
「なるほどね。君は中々鋭い所に目が行くね。確かにそうかも知れない、だけどね。僕はこの鉛筆を作ったんじゃない、考えたんだ!今高須君が持っているのはただの鉛筆、それに信憑性が有るようで無い説明書を加えると大抵の人間は(そんな馬鹿な)って思って使わないんだよ、だけど君は使っただろ!なぜ僕が君たちを選んだのか!SF研究サークルには変わり者が多いって聞いていたし、まして僕は前から秀介君の事が気になっていたから、君に持たせたほうが研究し甲斐があるって思っていたんだよ」
匠君のテンションがおかしくなってきた。垂れ下がっていた前髪を自前のバンダナでまくり上げて、隠れていた顔をあらわにさせた。
皆その顔を見てびっくりした。意外なくらいのイケメンだ、その反応を見た匠君はニヤッと笑い「以外でしょ!僕はイケメンなんですよ、しかも頭が良いしね。」とタカビーでナルシストな言い方をしてきた。俺はそれをみて「ああ、イタいタイプの人間だこいつ」と思った。
その傍ら、まだアタフタしている高須にしびれを切らして俺は、その高須の手から鉛筆を取り上げた。
すると高須はアタフタした動きから流れるように俺に近づいてきた。
「いい加減、目を覚ませやコラ」と声を上げて鉛筆をへし折ってやった。
高須の目が点になった。そしてその口からは悲痛な声が上がる。
「あああああー」と叫ぶ高須は半べそをかきながら地面に落ちた鉛筆を拾い上げていた。
そんな高須のそばに近寄ってきた恭介先輩が高須の胸倉をつかんで殴りかかった。
「こいつ、マジで無理、まじでクタバレや」といつにもない毒を吐いた。
そんな状況に一平さんと正蔵君はドン引き、拓氏先輩に至っては鉛筆が折れてしまったことを惜しそうな顔をしていた。
「そんな、殴らなくても」とあかねちゃんが高須によって肩を支えてあげると、まるで生気がないような感じで伸びていた。
「ははは、面白いね。やっぱり最高だよ君たちは、いい研究結果が得られたよ」と匠君が声を上げると、俺の中で堪忍袋の緒が切れた。
「おい、いい加減にしろよ、何様だと思ってんだ!他人が落ちていくのを見て楽しいのかお前は!そんなことをして何が楽しいんだおい、言ってみろ」
声が大きく出ていく、正門にその罵声が響き渡ると、登校してくる他の生徒たちはいっせいにこちらに注目してきた。
「楽しいよ、だって僕は昔からそういう人間観察をしていたから、小学校の時からみんなから吐出して頭が良いせいで周りに合わせるのが大変で、低レベルな授業を見ているうちに周りにいる頭の悪いやつらの人間観察が面白くなってきたんだ、高学年になると、運動のできない僕を逆にいたぶる奴が出てきた。僕は運動音痴だから、いくら頑張っても勝てないとわかってた。
だから、根暗な人間を演じて周りと関わらないようになったんだよ、そしたらどうだ、周りの連中の醜いさまと言ったら目立ち始めた。
それが面白くてね。
高校まで入ってからは人間心理にはまってついにはこのザマさ、こんな大学に入って人間心理を学んで周りを見ながら楽しんでる。
でもね。大学生活って意外とつまらないものでさ、毎日張り合いがなかったから鉛筆の設定を作って修介君に鉛筆を渡したわけさ」
そう言いながら匠君はカバンの中から浮浪者のコスプレを出して俺の目の前でそれを着て見せた。
「アッ」と俺が声を上げると「そう、あの時の浮浪者は演技してた俺ってわけ」とボサボサのかつらを取って俺に話しかけてきた。
「わたし、全部知ってたの、昨日修ちゃんに近寄って行ったのも匠君の差し金だし、それに・・・」あかねちゃんが押し黙ってしまった。
「なんだよ、言えないのか!普通に言えばいいだろうが、全部俺達見てたんだよ!鉛筆の研究のためにね。」
話が急展開になっていき俺は驚きしか出なかった。
「は!全部見てた?じゃあ、お前が鉛筆を渡してから今までずっとあのくだらない遊び見てたのか?」
そう言うと「当たり前だろ、鉛筆は自分の案で考えたけど、あくまでもあれの原動力は人間心理なんだから研究するわけにはいかないでしょ」
そう言って伸びている高須の手から鉛筆を取り上げた。
「まあ、説明書の内容を曖昧にしていたおかげでお前らがいろんなルールを後付けしてくれて、参考になったし、僕らでは考え付かないような使い方も考えてくれたから、これからの研究にプラスにできるよ」
そう言って立ち去ろうとした。
「ちょっと待ってよ、なんか言い残してる事あるんじゃないのか?」
俺はまだ怒りが収まってなかった。俺らに対してもそうだが、一番被害を被った高須にあやまってほしかった。
「え?なんかあったっけ、忘れたよ!じゃあね。」そう言ってスタスタと去ろうとする。
それについていくように足早に拓氏先輩が近寄って行って「匠君さ、あの鉛筆もう一個ないの?なんだったら説明書頂戴?ねえダメかな?」と鉛筆を欲しそうにねだっていた。
「先輩、すいません、このことは秘密にしておきたいんで申し訳ないですけど上げられないんです。」そうあしらわれてしまった。
去り際にあかねちゃんが「ごめんね。私はあまり・・・とにかくごめん高須君にも誤るね。ごめんね。」そう言って匠君の後をついて行った。
その後ろ姿を見ながら恭介先輩が呟いた「あの鉛筆のHBはハートブレイクの意味だなこれは」と言い放った。
その呟きが聞こえてたのか少し先に居た匠君が足を止めてこちらを振り向いた。
「それいいね。もらっておくよ」と言って再び校舎に向かっていった。
しばらくたって伸びていた高須が目を覚まして「あれ!俺どうしたんだっけか?なんか匠君が変な事言ってて・・・」と言ってきたので俺は事の詳細を今の高須でもわかるように事細かに教えてあげた。
高須は愕然としていた。
匠君にあしらわれてた事はもとより、そんな鉛筆に翻弄されてしまった自分が悔しかったらしい、僕はこの一連で人の気持ちというのは、簡単に操れるものなのだと痛感した。
それはまさしく(ハートブレイク)な鉛筆であったと俺は思う、そんな恭介先輩のセリフは僕の心にも深く残った。
そして、僕はその一連を題材にして今その小説を書いている。
HB鉛筆 @aposso200
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