大方の良かった点は他の方が書いてくださっているので、とりわけ気になった点を書いていきます。
素人の見解なので的外れな部分もありますので、そこのところはご了承ください。
①明暗の区分けと展開の組み合わせ
この物語は明暗の二極で言えば、後者に分類されます。特に序章、主人公の生い立ちや現在の境遇に加え、それが最も強調されていた廊下での主人公と水無月の対比。同じ空間に有りながら異なる世界の住人であることの演出が非常に上手く描かれていて、好きな人は一気に引き込まれるに違いありません。
ただ気になったのは、その後のシロの登場シーンです。ここまで暗一辺倒だった世界にとって、彼女のコミカルさは異分子的存在、落差が激しすぎるように感じました。シリアスな話ばかりでは読者側の息が詰まるため、マスコット的存在の必要性は分かります。所謂入浴シーンを挿入することで、読者にメインヒロインが誰か認知させることの重要性も分かります。が、恐らくこの物語の暗の部分に引き込まれて読み始めた人は、このシーンで多少なりと落胆してしまうのではないでしょうか。序盤の性急な暗から明への変化は、まだ物語に入り切れていない読者を振り落としてしまっているように感じます。
また逆に、明から暗への転換、起承転結で言えば転の部分こそ性急であるべきと思われます。これは私個人の趣向が絡むかもしれませんが、物語中盤の某女史との戦闘への入りにワンクッション挟んだのが非常に勿体無く感じます。激動の展開、急襲の動揺…そういった読者に与える焦燥感、某女史の印象等が薄れてしまうのではないでしょうか。
後述しますが、物語中盤から終盤にかけては振るい落としの段階は終わっていますので、終盤の展開は非常に引き込まれるものがありました。如何に中盤まで読ませるか、が肝要では。
②登場キャラの理念や精神の整合性
登場キャラには各々立場や理念、その時々の精神状態があるわけですが、それらに時々違和感を覚えることがあります。
例えば主人公。ネタバレを避けるため明言はできませんが、シロとの邂逅直前の出来事。それに関しての言及、逡巡が物語の後半すぎたように思います。先述の某女史との戦闘シーン、中盤の核とも言える場面で頭にそれが引っかかり続けたため、集中しきれなかった人もいるのではないでしょうか。
また、主人公の行動理念もややあやふやな感じがします。シロとの邂逅シーン後、彼女のことを精神的な意味で信頼するにはややパンチが足りません。主人公がよほどのお人好しなら分からなくはないのですが、それにしてはシロの過去、それに終盤での敵との対峙の際のセリフ等では、制裁や報復を是とする感性を持っているだけに、そうとも思えませんでした。
総合的な感想としては、非常に面白かったです。特に最終章のバトルの〆の演出、序盤の違和感の解消等、読了感が素晴らしく、続編が出れば買ってでも読みたいと思わされました。
これらは先述の性急な場面の転換と上手く合致しているため、後は序盤の引き込みと整合性が加わればパーフェクトだと思います。驚愕や焦燥以外を与えたい時はグラデーション的な滑らかな明暗の変化があると、読者も登場キャラの精神状態に付随して共感していきやすいのではないでしょうか。
あとは単純に誤字脱字、日本語の誤用等が散見されたので、修正を期待しつつ〆とさせていただきます。
登場人物にしっかりと芯が通っていて、読んでいて気持ちがいい。
行動や言動、あるいは物事に対する姿勢・思考の方向性といった部分に一貫性があり、不安定さやもどかしさという物を感じなかった。
きっとこう考え動いてくれるはずだという期待と、それを裏切らない安心感、そしてその意志を完遂するという爽快感を感じさせてくれる。
それはそのままキャラクターの魅力にも当てはまり、強い意志を持ってハッピーエンドを目指す姿は、とても魅力的で惹かれるものである。
現代の非日常を舞台にした異能力・魔術が存在する作品だが、設定や世界観が複雑すぎるということはなく、気構えずに気楽に読めるという点で良いと感じた。
犬耳や尻尾に対するこだわりも随所に見られ、単なるパーツとしてではなくヒロインの魅力を担う大事な要素として描かれている。
設定や内容が重過ぎず、文体や作品の長さも軽めなため、とても気楽に気軽に楽しめると思う。
とりあえずまずは読んでみて欲しい、というノリでお薦めできる作品である。
「好意」「欲望」「気紛れ」
この3つの要素が、人を動かす理由だと私は思う。
大抵の小説では、最後の「気紛れ」の部分が少ない。というか、行動にしっかりとした(その人物においての体裁の)理由が付いているし、大抵はその行動の本心を読み取る事が出来るようになっている。
ただ、だ。この小説には(私の中では)理由付けが曖昧で、理由を読み取る事が出来なかった箇所がある。
まあ、あえて付けていなかったのかも知れないが話を進めさせて頂く。
その箇所は、伏線としての後付け設定かも知れないし、自己暗示でもあったかも知れないし、はたまた本当にただの気紛れであったのかも知れない。
ここで注目すべき点は、その「気紛れ」が、本当に自然に、それでいて格好よく表現されている点だ。
筆者、竹林氏の文章力は、執筆した文字数が増えるほどに増していると思う。
それとも、私自身が作品を読んでいる内に、その文章に惹き込まれているのかもしれない。
要因は恐らく両者にあるだろう。
展開の速さ、セリフの程良い長さ、臨場感の表現、見る人までも癒される可愛さの表現、
その全てにおいて、素晴らしい。
星3を付けさせて頂きました。
ここまで長ったらしく書かせて頂いておいて何ですが、一番言いたい事は「耳の付け根を指の腹で撫でる」という動作が非常に、大変、とても、素晴らしい。という事です。(語彙不足)