第14話 エピローグという名前の手記

 魔神との戦闘を終えたワシントンDCだったが、数日たっても戦闘の爪痕は色濃かった。魔神は広範囲に攻撃を及ぼすものが多く、周囲への被害が甚大。契約主たるアフロディが死んでいたせいもありそれなりに弱体化はしていたがそれでも腐っても神。魔術連盟などにも被害を出しつつ、しかしながら勝利を収めたのだった。


 魔神との闘いから数週間が経つ。

 街は徐々に活気を取り戻していった。ゴエティアの魔術結社は自分たちの不始末を謝罪。ただし今回の事件についてはアフロディの霊が勝手に暴走したことによるものと結論づけた。

 また、今回戦った魔神についてだがあれはその一旦でしかないという。

 魔神を初めとする異形の神たちや祓魔術の天使も、魔術と同じく人の想像力と龍脈の力が合わさったことによって発言していると研究によってわかってはきているらしい。ただ魔神や天使がどこから出てきてどこへ帰っていくのか。私たちの知らない世界、つまるところ天国や地獄といった世界から呼び出している可能性も捨てきれないとした。

 今回のアフロディの魔神達はアフロディ自身の力によるものが大きく、特殊な例だとした。結果としては現在世界各地で猛威を振るっている各敵対組織と似たような原理で、強すぎる妄執と呼ばれるものが形を成して暴走していたらしい。


 強すぎる想いが、ああして被害をもたらしてしまう。しかしその想いの線引きはどこなのだろう。

 想い、なんて一口にいっても様々だ。

 キリスト教に名高い七つの大罪だけでも傲慢、嫉妬、強欲、憤怒、色欲、怠惰、暴食とある。今回の魔神などは行き過ぎた正義感がもとだろう。

 例えば愛情、も行き過ぎれば暴走していまうのかもしれない。

 日本じゃ愛情転じて憎しみとなって、身を竜にして愛する者を焼き殺したなんて伝説もある。

 自分もそうならないよう努めようと思う。



 自分は結局ここに残ることになった。連れてきたアフロディさんを倒してしまったことによって帰り方がわからなくなってしまった。

 帰ったところで過去がどうなっているかわからないので、自分としてはこのままでもいいなんて思う。

 確かに、お母さんと仲直りはしたい。ただ死んだ人はも戻らないし、時間を戻って会いに行くなんてのも自分はだめだと思ってしまっている。

 時間は常に一方通行。あっという間に過ぎていく。だから、悔いの残らないように相手のことをみて自分の言いたいことは言って。しっかり言葉に出してお互いの気持ちを確かめる。それが大事だと思ったりする。

 ダレルさんには困ったものだけれど。


 今はダレルさんから勉強と魔術を学んでいる。代わりに私は家事手伝いをしている。加えて――これは驚きなのだがダレルさんは読み書きが苦手らしい。なんでも小さい頃に災害が起きて、生きるのに必死で覚えるひまがなかったとか。

 なので、自分が先生となって教えている。ダレルくんはなかなかに覚えが悪く、毎回出す宿題に先生が頭を抱えている状況だったりする。


 最後に――お母さんとお父さんへ。

 私は40年後の世界にいます。

 でも、元気に暮らしています。いい人に会えたから。ちょっと年が離れているけれどわりと好きだったりします。いつかお母さんたちにも紹介できたらいいな。

 今度、船を使って日本にもってみたいと考えています。今の日本はかなり大変な状況なのだとか。

 でも、私は私のできることをしたいから。前を向いて頑張ります。

 お母さん今までごめんなさい。でも、きっといつか胸を張れるような人になってみせます。ありがとう。

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荒廃のマギカ ジョーケン @jogatuji

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