この作品は、架空の町エカトールに集うアウト・ローたちが起こす騒動の悲喜交々を、軽妙で小気味よい筆致で描いた群像劇です。
本作品の最大の特徴は、頻繁に行われる視点変更の妙にあるといえるでしょう。
WEB小説界において「頻繁な視点変更」といわれると、一つの出来事に対して、そこに居合わせた人物がそれぞれその視点で出来事について語る――要するに、同じ事象を語り口を変えて説明するだけのもの、と捉えてしまうかたも多いかと思います。
しかし、本作は一味違います。
それぞれのキャラクターの視点から語られるストーリーは、常に流動的で新たな動きが発生します。また、一つの視点で敷かれた伏線が、のちに別の視点から回収されることも多く、ストーリー構成の巧みさが光ります。
また、頻繁に視点が変わりながらも読者が混乱しないのは、キャラクターの書き分けと状況の描写がしっかりとしているから。
作者様自身があらすじに書かれているとおり、登場するキャラクターたちはほとんどが「ろくでなし、もしくははバカ」なのですが、読者に不快感を与えるようなキャラはいません。まさに、愛すべきろくでなしたちといえるでしょう。
これぞ群像劇、といえるこの作品。文庫一冊分強の分量がありますが、一気に読了することをおすすめします。
エカトールでの事件は決着をみましたが、主人公の女剣士マナの冒険はまだまだ続くようです。続編を期待いたします。
ファンタジー、武侠小説、そしてウエスタンの要素までを詰め込んだ舞台設定が魅力の、極上のコメディ。多視点から語られる文章も軽妙で、作者の小説技巧の確かさが感じられる。
特に、悪役二人の掛け合いは抱腹絶倒もので、よくできた喜劇映画を見ているかのような面白さ。
まだ話数はさほど進んでいないものの、確実に評価に値する作品である。
2016.3.26
一応の完結につきレビュー追記
最後まで飽きることなく面白く読み通しました。ここまで洗練されたエンタテイメント小説に出会えるとは思いもよりませんでした。続編の登場に期待します。
ロイ君頑張れ!