『徳エネルギー』の発展によって、これまでにない発展を遂げた人類社会。
だが『徳カリプス』が起こったことにより人類文明は崩壊。
生き残った人々は徳エネルギーを求め即身仏を漁って暮らしていた……。
まるで変な薬をキメてしまったかのようなあらすじ紹介だが、全て事実である。
こうした設定が尖っている作品は、尖っている分「出落ち」っぽくなりがちなのだが、そんなことはないのがこの作品である。
「第一部」では荒廃した都市で、採掘屋を営むガンジーとクーカイが物語を牽引していくが、「第二部」では、寺院都市にて得度兵器と戦う覚醒者・肆捌空海が中心人物になったりと、「部」が切り替わるごとに主人公と舞台が移り変わり、様々な角度から物語が語られることで、話が進むにつれて徐々に世界の秘密が明らかになっていく、ストーリー構成はただの色物で終わらない凄みを感じさせてくれる。
作中で頻出する見知らぬ単語に関しては、作者がTIPsでしっかりと解説してくれているので、興味を持った人は恐れることなく新たな世界を覗いていってほしい。
(必読!カクヨムで見つけたおすすめ5作品/文=柿崎 憲)
世界の有り様を買えた「徳エネルギー」
人はそのエネルギーを使い、無尽蔵とも言えるほどに成長し続けた。
しかし、世界はその徳の力で滅びた。強制的に人を昇天(解脱)してしまうほどに徳が集まってしまったのだ。
そして世界は荒廃し、その更に後からこの物語は始まる。
非常に長い話にはなるが、キッチリと主人公やその目線が分かりとても読みやすい。そして最初は「徳パンク」なんてネタなのだろうと思っていたが、思った以上に世界についての考察や徳エネルギー、得度兵器(徳エネルギーを原動力とする兵器)についてが書かれていた。未知とも言える「徳」と言う物を様々な視点から描く作品。
一度少しだけでもいいので、時間のあるときに呼んでみると、もしかしたらあなたも「功徳を詰める」かもしれない。