概要
月の氷を掘った。四十億年前の地球が、そこで待っていた。
二〇五〇年、月の南極。基地〈アルタイル〉は、太陽が一度も当たらないクレーターの底から氷を掘り、水と酸素を作って回っている。
ある日、掘削班の技術者が発熱した。医務官・真壁遼は、宇宙環境による免疫低下とヘルペスの再活性化と診断する。検査結果も合っていた。教科書どおりの、正しい診断だった。
薬が効かない。
二例目が出る。一例目と一度も会っていない男だった。三例目、四例目。接触歴がない。既知の病原体はすべて陰性。地球の研究所も、四十一頁かけて「明らかにできなかった」と答えてきた。
地球は帰還を拒否する。四十人は、真空の外に閉じ込められる。
真壁には、もう調べる場所がなかった。既知のものは全部潰した。
残っているのは、調べていないものではなく、調べて捨てたものだけだった。
――全二十六
ある日、掘削班の技術者が発熱した。医務官・真壁遼は、宇宙環境による免疫低下とヘルペスの再活性化と診断する。検査結果も合っていた。教科書どおりの、正しい診断だった。
薬が効かない。
二例目が出る。一例目と一度も会っていない男だった。三例目、四例目。接触歴がない。既知の病原体はすべて陰性。地球の研究所も、四十一頁かけて「明らかにできなかった」と答えてきた。
地球は帰還を拒否する。四十人は、真空の外に閉じ込められる。
真壁には、もう調べる場所がなかった。既知のものは全部潰した。
残っているのは、調べていないものではなく、調べて捨てたものだけだった。
――全二十六
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