概要
AIに仕事を奪われた最後の添乗員は、今日も会社の金で寄り道する
「ミキ、五分だけ愚痴らせて」
「うち、あと十分でお風呂なんだけど。……聞いたら、そっちのツアーの割引券ちょうだいね」
「取引が早い」
「家族四人分」
「聞き賃、高くない?」
うちの会社に、葛西道雄っていう人がいる。五十二歳、添乗員歴二十六年。旅程はAIが組む時代で、人間の添乗員は来月末に廃止。その最後の一人。
この人、二十六年で四百十二回、旅程にない寄り道をしてた。古いトンネルとか、廃線跡とか、名前も知らない場所とか。理由を聞いたら、「俺が見たかったから」。
「……お客さんが行きたかったんじゃなくて?」
「本人が」
「だから愚痴ってるの」
なのに会社は、そんな男を新設の部署に引っ張った。その世話を押しつけられたのが、私。
「で、なんでその人なの」
「それは、まだ言えないの」
「じゃあ、割引券
「うち、あと十分でお風呂なんだけど。……聞いたら、そっちのツアーの割引券ちょうだいね」
「取引が早い」
「家族四人分」
「聞き賃、高くない?」
うちの会社に、葛西道雄っていう人がいる。五十二歳、添乗員歴二十六年。旅程はAIが組む時代で、人間の添乗員は来月末に廃止。その最後の一人。
この人、二十六年で四百十二回、旅程にない寄り道をしてた。古いトンネルとか、廃線跡とか、名前も知らない場所とか。理由を聞いたら、「俺が見たかったから」。
「……お客さんが行きたかったんじゃなくて?」
「本人が」
「だから愚痴ってるの」
なのに会社は、そんな男を新設の部署に引っ張った。その世話を押しつけられたのが、私。
「で、なんでその人なの」
「それは、まだ言えないの」
「じゃあ、割引券
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