概要
高校二年生の娘・葉月は、父の調査に付き合い、山間の町を訪れる。父の旧知である藤井先生とともに山へ入った三人は、そこで低い鳥の声を聞いた。
同じ場所で、同じ声を聞いたはずだった。
しかし葉月には古い道の先から、藤井先生にはその反対側から聞こえ、圭介には声のした場所そのものが分からなかった。
翌日、藤井先生は一人で山へ戻り、転落死する。
なぜ藤井先生は、もう一度山へ向かったのか。
二本のマイクに残された録音と、十五年前にも同じ山で聞かれていた声。古い歌に詠まれながら、その正体が定まらない「呼子鳥」。
何が鳴いたのか。
そして、その声はどこから聞こえたのか。
古典、民俗学、音響を手がかりに、二十二年にわたる「声」の謎を追うホラー・ミステリ
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!音の向こう側に、をちこちの世界が広がっている。
一筋縄ではいかない、深みのある物語でした。
特に印象に残ったのは、何かを研究するということが、どんな思考や行動の積み重ねなのかを実感できるような丁寧な描写です。
鳥の声が、人によって違う方向から聞こえる。それがどうしたの? と、そのまま通り過ぎてしまいそうな小さな疑問。
けれど、そこから一つずつ可能性を考え、確かめる。また新しい疑問を見つけていく。さまざまな人や分野へと広がっていく探究に、一体どこまで世界が広がっていくのだろうと驚かされます。
言葉の端々に現れる主人公の成長や、主人公と父親の関係性の変化も大きな見どころです。
そして「をちこち」。読み進めるほど、この言葉の意味が少し…続きを読む - ★★★ Excellent!!!をちこちとは??誰しもが知っている和歌の美しい言葉の謎に迫る作品です。
私はスッキリとした美しいタイトルに惹かれて本作品を拝読しました。
作者様の作品紹介のジャンルで言えばホラー・ミステリーとのことですが、読了した私としては、多感な年頃である高校生の女の子の葉月ちゃんと、お父さん、それから亡くなったお母さんの絆と未来の物語だと感じました。
もちろん、読む人によって受け取り方は違うとも思います。もしかしたら、日本の和歌や伝承の謎を追う怪異の物語だと思うかも知れませんし、作者様のおっしゃるとおり本格ミステリーだと思うかも知れません。そんな、読む人によって捉え方が異なる、もしくは複合する多面性が本作品の魅力の一つだなとも感じました。
22年間、お仕事の傍らに寡黙…続きを読む - ★★★ Excellent!!!人は何故、聞こえた声の正体を探したくなるのだろうか
呼子鳥という不思議な声の正体を追い求める物語。
声はどこから聞こえてくるのか。その向こうには何があるのか。初めはホラーの印象が強くドキドキしていましたが、読み進めるうちに、葉月達とともにその謎を追いかけていました。
古典や民俗学、音響学など、人との縁を繋ぎながら、さまざまな視点で謎に迫っていく展開が印象的です。
これは単に不思議な現象の正体を探るだけではなく、人が未知のものに惹かれ、答えを求め続ける姿を描いた物語でもあったのだと感じました。
ふと遠くから聞こえる声に耳を澄ませたくなるような、不思議な余韻の残る作品でした。
じっくりと謎を調べる作品を読みたい方におすすめしたいです。