神殺しのゴウト完結しました。4度に渡る加筆と修正、一度完結させた作品を何度も手直しして書くという悪あがき、流行ジャンルに合わせるどころか1話1話ぎっちぎちの文章という、素人の大長編ほど見づらい作品はないと思いますが、それでもちょっとでも読んでいただいた方々には感謝しております。
あとがきにちなんで「あれは実はこうだったんですよ」みたいな言い訳でも書こうかなと思いましたが、せっかくなんで「そもそもなんでこんな話を書こうと思ったか」について書いてみようと思います。
そもそもの始まりは2010年頃、今よりはもうちょっと人がいたmixiで専用のアプリの配信が始まり、その中に「携帯小説」という小説を投稿し閲覧するアプリがありました。当時はカクヨムはもちろん、なろうも今ほど有名でなかった頃で、世間的には「恋空」や「あたし彼女」といった、女性がガラケーのブラウザで読むような恋愛系小説がヒットしていた時期でした。しかしラノベ・アニメ界隈では「SAO」や「とある」シリーズが大ヒット中であり、同アプリのファンタジーカテゴリは、それこそデスゲーム系MMOや学園異能バトルものが多数投稿されていました。
で、それらの多くは原作をそのままなぞったような、美男美女の天才プレイヤーがスキルを積んで(あるいは恵まれて)活躍するといった話がメインで、昔も今もひねくれ者の自分としてはそういうトントン拍子のチートものが好きではありませんでした。
主人公=容姿端麗で若々しく才能溢れる戦士の図に対し、真っ先に思いついたのが「老人」でした。そういう意味では出オチの発想ですし、携帯小説版での本作のタイトルを「FAINAL FANTA爺」にするなど、今となってはやや不純な気持ちで執筆スタート。
ところが、いざ書き出してみるとそれなりに思うところも出てきて、一応当初のテーマとして掲げていた「プレイヤーとプレイヤーが交流するMMORPGではなく、筋書が全て決められプレイヤーがそこに放り出されるRPG世界」というものに、自分なりに向き合ってみました。
エンタメ作品のお約束として、主人公が表現上こそ凡人であれど、それでも顔立ちの整った美男美女で描かれる事は常識ですが、本作はあくまで「無作為に選ばれたプレイヤーの物語」としておおよそ読者の喜びそうな個性などは排し、どこにでもいそうな優しい祖父と無邪気な孫、ちょっとワケありのスレた女性に中年オタクになり、かくして字面にしても地味なパーティーが誕生しました。
趣向も目線も違うプレイヤーが、それぞれどんな気持ちで等身大のRPG世界を冒険したか……それが上手く書けたかどうかは分かりませんが、読んでいる内に「あのゲームはあのキャラがああだったなあ」みたいな事を思い浮かべてもらえたら幸いです。
もう一つは作品概要にも書きましたが、ヴィルガスト(コミックボンボン発祥のマルチメディア作品)やゴッドメディスン(コナミのゲームボーイ用RPG)など、90年代に流行った「異世界転位」が大好きなので、そういう話を書いてみたかった次第です。異世界転生と似てますが、転位の「凡人が勇者として選ばれる」「元の世界への帰還を目指す」ってのがロマンを感じるので。
結局言い訳になってしまいましたが、要は軽いきっかけでも、かれこれ何年もかけて自分なりに意義のある作品になったかなと思います。