抗ガン剤の副反応なのだろう、立ちくらみが酷くて困る。
食欲もない。と言いながら無理矢理に米三合を腹に詰め込んでいるのだけれど。
いまその気になれば、体重なんか簡単に落ちるのだろうが、
生憎とその気にはならない。ダイエットは元気なときにやらないとな。
しかしアレだ。自分がこんな状況になると、他人の訃報に敏感になってしまう。
まして子供時代ド真ん中にその影響を浴び続けた人物が亡くなったとなれば、
何とも言いようのない感慨が押し寄せてくる。
松本零士氏が亡くなった。先週の13日、85歳だったという。
イロイロとお悔やみの言葉を並べたい気持ちもあるのだが、
何を書いても不正確なものになるだろう。
単に悲しいですね、ありがとうございました、では済まないくらい
自分自身の人間的な根幹部分に、あるいはモノを書く者としての根源に
氏の作品の強い影響を受けている。いまの感情を正確に表現するのは難しい。
私はミステリーやらファンタジーやらいろんな小説を書いているが、
数少ないとは言え児童文学的な作品も書いている。
そんな私の中の児童文学作品の理想を挙げるなら、「銀河鉄道999」だ。
もちろん999は漫画であり、児童文学の範疇には入らない。
この作品を児童文学として評価するという声も寡聞にして知らないし、
それを不満に思ったことは特にない。
だが私の中では、これこそが児童文学なのだ。
だから児童文学的な作品を構想するとき、
いつも「999みたいな作品が書きたい」と頭の隅に意識して物語を考えている。
999を始めとする松本SF作品群は日本のSFファンの裾野を大きく広げた、
というような論評はこれまでもあったし、この先も出てくると思う。
それは紛れもない事実だし、否定するつもりは毛頭無い。
ただ個人的にはそういったジャンルを離れた、
「子供に読んでもらうために大人が描いた物語」という視点から
もっと評価されてもいいクリエイターなのではないかと思えてならない。
合掌。