死んだ。気がついたら俺は全裸の銀髪美少女になっていた。背中に翼。
あちこち触ろうとするが、手で触れようとすると身体が霧のようにまぎれてしまう。だめだよむりをしてはいけない。お前はまだ生まれたばかりなのだからね。全能の神ゴッドファイブフィンガーがほほえむ。さあ行っておいで。追い出される。いったいどうすればいいのだろう。こまったなー。
ぽてん。放り出される。世界は闇の炎に包まれた。ひゃっはー。ひどい。女神さま。畑にかぶが埋まっている。ひっこぬく。カブ型妖精をゲット。食ってみる。ぎゃああああ。うまいなこいつ。ちょうど腹が減ってたところだ。ぎゃあああ。はあはあいきなり女神様にボク食べられちゃいました(はあと)違うだろ。かぶ型妖精復活。
まずは神殿へ行ってこの世界を救うチート勇者を召喚するのです。めんどくさいこと言うなあ。女神がチート能力を与えられるなら、何で自分に与えないんだ?それはそういうお約束だからです。
わかった。きたれ勇者よ。ふわあーん。だめですよ普通に呼んだって勇者はきません。どうして。
最近、ブラック異世界っていううわさがひろまってしまってですね。
いや普通ブラックだから勇者をよぶのでは?
それが、いまどきの勇者は転生する異世界もよりどりみどり、いかにらくなチート能力で美少女やエロイベをクリアできるかで選ぶ完全なる売り手市場なんですよね。
なるほど人材不足と。つまり優秀な若者ほどらくな大企業異世界へ行ってしまうと。勇者候補をいかに口先三寸でだまして連れ込むかが女神様の乳の見せ所です。わかった。ひとはだ脱ごう。おっぱいぽろん。だめですねそんなおっぱいでは。いいですか、表紙絵に干し柿をふたつならべたような物体があったとして買いますか?買わないでしょう?そこはウソでもばんぺいゆみたいな感じにしておかないと。なるほどばんぺいゆか。わかった。ばんぺーいーゆ!ぼゆん!ちょっと重過ぎるような。それがいいんです!
さて面接ですが、ちかごろの勇者は先ほども言いましたように異世界転生先を選んだり、転生させても3ヶ月以内にやめたりして、なかなか離職率が高くなっております。はい。なので、まずは美人局借金漬けにして麻薬と女をあてがいストップ。それ以上言うな。でしたらトラックで轢き殺して強引に拉致ってくるというのはどうでしょうか。うん、それなら許されるな。分かりました。では優秀な人材をトラックで轢き殺してきます!それもちょっとどうかなと思うなあ。もう少しマイルドな表現はないの。そうでもしないと優秀な人材がですね。はいはい分かった。
そして、人材を確保したあとは勇者啓発セミナーに参加させてチート能力を洗脳するわけですが。その表現もどうかと思うんだけど。大丈夫ですよ女神様の与える祝福こそがチート能力の源になるのです。たとえばどんな能力がいいかな。能力でブラック異世界とホワイト異世界に分かれるんだろ。そうですね、まず勇者身分を国家公務員扱いとし、雇用を保証します。うんうんそれで?勤務時間を朝9時から夕方5時までの8時間とし、残業ぶんに関しては通常の2倍のステータスを与えます。いいねえ。福利厚生完備。家賃補助、武器購入半額補助、いまなら魔法石購入に1%のところ2%のポイントを配布します。カードつくるわ。夏冬のステータスボーナスは3ヶ月ぶんの経験値でどうでしょう。悪くないね。もし月の残業バトル時間が100時間を超えた場合、魔王を首にします。いいね。で、もし万が一、勇者が異世界を救うことに失敗し、殉職ということになった場合は、二階級特進のうえ死亡保険金をマックス支払い。望めばもう一度この世界へ転生して勇者再チャレンジのチャンスを与えます。まさにVIP待遇じゃん。いいね。
じゃあこの条件で勇者の募集をかけますがよろしいですか。
ちょっと待て。
俺がやる。だって女神でいることに何のメリットが?確かに。では女神様を勇者として雇用いたします。わかった。
俺はその一ヶ月で残業100時間をこなし、魔王を無事首にした。
おしまい。短い話。