拙作をご一読いただき、ありがとうございました。
ミステリーを書くに当たり、
①狭い屋敷などの限られた空間で殺人事件が起こり、関係者の中に犯人がいる
②事件が起こり、捜査を進める過程で犯人にたどり着く
の二つのパターンが考えられる。二つの内、①が圧倒的に難しい。もう読者を驚かせる犯人像なんて出尽くしてしまった感がある。読者をあっと言わせようと思うと、反則まがいの荒業を持って来るしかない。英国のドラマにはまだこのタイプが多い。②はテレビ・ドラマなどでよくあるパターン。一見、派手な事件さえ用意できれば量産が出来る。日本や米国のドラマはこのタイプが多い。米国のドラマはひとひねりあって、一度、出てきた人物で嫌疑が晴れた者がやっぱり犯人という意外性を持たせたものが多い。
閉鎖された空間で事件が起きる。容疑者は一人だけ。それだと物語が持たないので、そこから関係者を増やして行く。事件関係者が出そろったところで犯人を特定する。そんな変則パターンを試みた作品。最初は連鎖殺人事件という、ひとつの殺人事件が次の殺人事件の動機となって行く~という設定を考えた。連鎖殺人事件はいずれ別の作品でやってみたいものだ。
ラストにひとつ仕掛けを用意してある。そのため、犯人が正確に特定できないようになっている。謎を解く鍵は文中、一か所(一文)だけ。
思いついた時には「やった!」と思ったが、昔、放送されたミステリードラマに似た設定があるのを見て、「誰も読んだことがないトリックを思いつくのは至難の業だ」と痛感させられた。
※第四作目の長編小説
【五本爪の凶器】