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ギガントアーム・スズカゼ 第六話 製作途中版③

この記事はギガントアーム・スズカゼ第六話の書き上がった最新分を掲載しているものです。
これまでの話は下記リンクから読めます。
https://kakuyomu.jp/works/16817139556247117561

◆ ◆ ◆

「ふ、う」

 一つ、一郎は呼気を吐く。コントローラを持つ手にそれがかかる。だが同時に足元で火を噴くグラウカだった鉄塊の熱も感じている。

「身体が、二つあるみたいだ」
「実際そうだからな」
「直に慣れるだろう、加藤なら」
「だ、と、良いけど」

 頭を振って眩暈を追い払いつつ、一郎は何げなくミスカの方を見た。
 そこには。
 ミスカ・フォーセルが、二人いた。

「……? ?」
「なんだ、どうした加藤。妙な顔をして」
「なんだ、どうした加藤。妙な顔をして」
「いや、いやいや! どうかしてんのはそっちだろ!? なんでいきなり双子になってんの!?」
「なそんな事か。単に精神と身体を分割しただけだぞ」
「ここは仮想空間だからな。この程度の芸当は当然出来る」
「うわー軽く言っちゃってくれるねえサラウンドで。てか何の為にそんな事を?」
「勿論、本当の交渉を始めるためだ」

 そう言うと、一郎から見て奥側にいたミスカが立ち上がる。

「交渉? 本当の? そもそも誰と?」
「それはこっちで進めるから気にしなくていい。それよりも、新手が来るぞ」

 隣で座り続けているミスカに諭され、一郎はもう一度テレビを見る。再びスズカゼの視点になる。
 と同時に気付く。センサー。接近する熱源。
 見やる。東の空、森の向こう。背部スラスターを全開にし、近づいて来る複数の敵影。

「ど、どうする!?」
「ウォルタールの被弾可能性と、包囲による行動不利。どちらも受ける訳にはいかない」
「つまり?」
「攻めるぞ。敵が数を揃えるより先に潰して回るんだ」
「なる、ほどっ!」

 ミスカの助言に従い、一郎はスズカゼを操作。脚部及び背部のスラスターが爆発。生み出された推力によって鋼の巨人が空を駆ける。
 その最中、一郎の後ろのちゃぶ台。着席したもう一人のミスカは、卓越しにもう一人のパイロットと相対する。

「さて。相当に回りくどくなってしまったが、ようやく本音が聞けるという事で宜しいのかな」
「宜しいですとも。あの場所じゃあ、どーしてもディナード四世の肩書きが邪魔でしたからねえ」

 にこやかに笑うティルジット・ディナード四世。その最中、一郎は新手のグラウカ二機と相対していた。

「う、お、おっ!」

 スラスター推力そのままに、一直線の鉄拳で強襲するスズカゼ。狙うは右のグラウカ。だがその直線上へ、左のグラウカが割って入った。
 左グラウカは腕を構える。その上腕には、人間サイズにするならマンホールほどの丸い金属板が装備されている。いわゆる丸盾《バックラー》だ。
 一郎は怖じない。戦意高揚魔法はこの程度のものに脅威を感じさせない。
 故に。
 その丸盾を中心として展開された光の大盾を、一郎は見事に殴りつけてしまった。

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