この記事はギガントアーム・スズカゼ第六話の書き上がった最新分を掲載しているものです。
これまでの話は下記リンクから読めます。
https://kakuyomu.jp/works/16817139556247117561◆ ◆ ◆
轟音。
衝撃。
弾かれあい、たたらを踏む両機。
グラウカにダメージは無い。盾で防御したのだから当然だ。
スズカゼにもダメージは無い。不慮の衝撃だったが、この程度でどうなる機体ではない。
むしろダメージがあったのは、感覚を共有するパイロットの方だった。
「痛って、痛ってぇー! でっかくなるのかよ!」
「防御フィールド発生装置という事だ。見た目に騙されるな」
「身に染みて分かったよ、っと!」
サイドステップするスズカゼ。直後、その上半身があった場所を火線が走った。盾グラウカの後ろに居たもう一機のアサルトライフル射撃である。
「厄介な……!」
攻めあぐねる一郎。その背中とモニタ内の戦闘を眺めながら、ジットはすっかり寛いでいた。気付けば彼の服装は最初にあったツナギになっており、ちゃぶ台の上にはオレンジジュースが置かれている。魔法による仮想空間は味をも再現できるのだ。
「はてさて。一息ついたところで、改めて交渉しましょうか」
「その必要はない」
ジットと向かい合うもう一人のミスカ――ミスカBは、自分のコップにオレンジジュースを注ぎながら言った。
「ほう。何故です?」
「僕達がこの卓に着いた……いや。ギガントアーム・スズカゼの出撃に同意した時点で、アナタには分かっている筈だ。僕がアナタの真意に気付いている事に」
「いて、いってえ! ああもうどうすりゃいいんだ!」
「加藤は移動に専念するんだ。攻撃は僕が行う」
ミスカAはコントローラを操作、スズカゼの内蔵装備の起動にかかる。それと並行しながらミスカBはジットへと語る。これまで積み重ねた推論を。
「思い返せば、最初からおかしかった。ギガントアーム・スズカゼ……いや、ランバを発見したあの時から、既にキミは生身だった。危険地帯に赴くのだから、魔法による精神分体を使うのが道理の筈だ。今の僕や加藤のように」
「それは、えぇと。そうそう、意識伝達のトラブルを極力避ける為ですよ」
オレンジジュースを傾けるジット。同じタイミングでスズカゼの右腕、変形前は日本刀の刃部分を構成していた部位に光が灯る。
光は瞬く間に拡大し、スズカゼの右前腕を包む。かと見えた矢先に弾けて消える。
「これは」
一郎は目を剥く。何故ならスズカゼの右前腕には、二連ビームガン内蔵の増加装甲が装着されていたからだ。
「八時方向から敵増援! 足を止めるな加藤!」
「わ、分かってるって!」
スラスター推力で攻撃を避けるスズカゼ。モニタ越しにそれを見ながら、ジットは続ける。
「言葉の伝達ですらあのように滞る事がちょくちょくあります。まして調査対象は正体不明のギガントアーム。これにもし精神分体へのジャミング機能が搭載されていたら、調べようがないですからねえ」
楽しそうに笑うジット。こんな所でどうでしょう、とでも言いたげに。